本と、ケーキと、わたしと。 #1 わかったさんのショートケーキ
子どものころから大好きで何度も読み返した児童書がある。『わかったさんのおかしシリーズ』だ。
クリーニング屋さんで働くわかったさんが配達途中に不思議な世界に迷い込み、そこで出会ったおかしな住人たちとお菓子をつくる物語。
お話としての面白さはもちろんなのだが、イラストが可愛らしく色使いも素敵で、この本のことが愛おしくて仕方がなかった。
シリーズは全部で10冊あるが、わたしの家にはクッキー、ドーナツ、アップルパイ、アイスクリーム、マドレーヌの5冊しかなかった。刊行順でもないのでなぜこの5冊だったのかは不明である。我が家はわたし以外は誰も本を読まないのでシリーズの他の本は買ってもらえず、家に全巻揃っている幼馴染がとても羨ましかったことをよく覚えている。
いまも時々読み返す児童書であり、わたしが本好きになった原点だと言える本だと思う。
そんな『わかったさん』の公式が先日、驚きの発表をした。
刊行されてから30年経ったいま、新刊を発売するというのだ。まさかまた新しいお話に出会う機会が訪れるなんて。とても嬉しい!!!
折角なので新刊が出る9月まではわかったさんのお菓子をつくりながら待ちたい。
子供のころ何度も繰り返しつくったのはクッキーなのだが、今日はコロナ禍につくった『わかったさんのショートケーキ』を振り返りたいと思う。
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『わかったさんのショートケーキ』と出会ったのは古本市のイベントだった。
お寺の中に古書店が立ち並び、本好きな人と交流しながら販売をする、本好きの本好きによる本好きのためのイベントだ。
基本的には大人の本が多いが、そこにポツンと置かれていたのが『わかったさんのショートケーキ』だった。いつか全巻揃えたいと思っていたので、「ここで出会えたのも運命かもしれない」と購入した。
その後コロナ禍に突入し、暇を持て余していたわたしはケーキでも焼こうかと思い立った。それもパンケーキやパウンドケーキではなくクリームたっぷりのホールケーキだ。
大人になってからお菓子を、ましてやホールケーキを焼こうと思ったことなんてなかった。なのにその時はどうしてもホールケーキがつくりたかった。
参考にしたのはもちろん『わかったさんのショートケーキ』だ。今の時代クックパッドやYouTubeで簡単にレシピを探せるが、やっぱりわたしはわかったさんがいい。
ショートケーキをつくるにあたって最初にしなければいけないこと。
それは…
「わかったさんと、ショートケーキの理解を深めること」
間違いなくこれだ(わたし調べ)。
本を読んでショートケーキをつくるためのカギを拾い集める。これで失敗しない(はず)。
デメリットをあえて挙げるとすれば、つくるまでにかなりの時間を要することだ。
小学生のころ初めてホールケーキを焼いた。その時は卵白の泡立てが足りなくてスポンジが膨らまず、失敗した。でも今回は大丈夫。わかったさんと一緒にカギを集めたのだから。
いざオーブンへ。
焼き上がった。
型から抜いて、いざ。
うん、綺麗な仕上がり。
色はとっても良い!が!
みなさんお気付きだろうか?
この薄さを…
この圧倒的な薄さ…!
実は『わかったさんのショートケーキ』は20cmの型が必要なのだが、家にはもっと大きな型しかなかったのだ。
まぁ大丈夫でしょ〜〜〜!!!
と思った。そして焼いた。
結果、あんまり大丈夫じゃなかった。
ちなみにこの後の工程はスポンジを2枚に分けて間にクリームとイチゴを挟まなくてはいけない。この薄さだとケーキの高さが低すぎる。
仕方がないのでスポンジをもう1個焼いた。
そして飾り付け。
初めてつくったとしか思えない不器用さMAXのケーキが出来上がった。クリームを塗るのに大苦戦し、回転台を買えば良かったと後悔した。でも買っても次いつ作るか分からないしな…
ちなみにスポンジはとっても硬かった。大きな型で焼いた分、焼き時間を少し短めにしても良かったかもしれない。でも味は美味しかった◎
なかなかの不器用ケーキを生み出してしまったが、久しぶりにわかったさんとお菓子作りが出来て楽しかった。
スイートポテトが出る9月までに他のお菓子もつくりたいと思う。