不思議の国に誘われて
突然現れたシロウサギを追いかけて不思議の国に迷い込むアリス。そのへんてこりんでちょっぴり怖い物語に初めて出会ったのは幼稚園のときだった。家族の誰かがディズニー版「不思議の国のアリス」のビデオをレンタルしてきたのだ。
今となっては魅力的だと感じるアリスの世界だが、正直いうと当時は苦手だった。ずっと笑っているチェシャ猫も、クレイジーな女王も、いもむしも。その世界観がどことなく不気味で怖かったのだ。
その印象が強いからなのか、わたしはアリスの原作を読んだことがない。小説はもちろん、絵本にも触れてこなかった。物語を離れた“一種のデザインとしてのアリス“は好きなのだが、なかなか原作に手が伸びないのが実情だ。
そんなわたしだが、ここ数年アリス関係の美術展に行くことが増えてきた。
「美術館行くの好きって言ってたよね?チケットあるんだけど行かない?」
アリスの展示が始まると誰ともなしに誘ってくれる人が現れるのだ。ちょっとだけ縁を感じる。
そんなわけで先日、大阪高島屋で開催されていた「出版160周年記念 不思議の国のアリス展」へ行ってきた。
今なお語り継がれるこの物語が作られたのが160年前。その歴史の長さに驚く。
まずは著者、ルイス・キャロルの生い立ちから。この時点でわたしは大きな勘違いをしていたことに気付く。
ルイス・キャロルって男性だったのか!!!
勝手に女性だと思いこんでいた。しかも不思議の国のアリスはルイス・キャロルの娘に語った物語だと思っていたのだが、自身の娘ではないらしい。わたしは不思議の国のアリスのことを何一つ理解していなかったようだ。
この160年の間に不思議の国のアリスは様々な出版社から出版されている。アリスといえば水色のワンピースのイメージが強いが、本によっては赤もあるらしい。
この展覧会ではルイス・キャロル自身が描いた挿絵とジョン・テニエルの挿絵が一緒に展示してあった。
アリスの挿絵といえばジョン・テニエル。本を読んだことがなくてもこの挿絵は有名なので親しみ深い。ルイス・キャロルの絵は初めて見たが意外と上手い。
1つのシーンに対して4種類の絵があるのだが、わたしが一番衝撃を受けたのがこの絵だ。
いもむしの装いが随分と違う。ルイス・キャロルの絵は赤ずきんチャチャの海坊主っぽい。分かる人いるかな…?
下絵はジョン・テニエルの絵だが、着色の仕方で印象が変わる。左の赤いアリスは線がしっかりと残っていて挿絵感が強いが、右の水色のアリスは線が少なくファンタジー感が強い。同じ絵でも違う世界観になるのが面白い。
今回の展覧会は「不思議の国のアリス」と「鏡の国のアリス」を両方楽しむことができる。作品の変わり目には登場人物の紹介があって分かりやすい。
ハンプティダンプティって学生時代の英語の教科書に載ってたな、懐かしい!とっても今更なのだが、ハンプティダンプティも双子の兄弟も「鏡の国のアリス」の方だったことを初めて知った。不思議の国じゃなかったのね。
鏡の国のアリスはストーリーも知らないので3人のキャラクター以外は初めて見た。チェスの女王に赤と白がいるのだけど、これはアリスインワンダーランドの映画と関係あるんだろうか?
こちらは本制作での拘りがよく分かる一枚。アリスが鏡を潜り抜ける表現に拘ったとのこと。著者の拘りが光る本は宝だと思う。
フォトスポットもあり充実した展覧会だが、時間的には1時間あれば余裕で観られるサイズ感だった。
アリス展の外は英国展!
折角なのでスコーンを買って帰宅。ブリティッシュプディングというお店のスコーン。
田舎の大きなスコーンは昔ながらのスコーン。ロンドンのスコーンは生クリーム入りのスコーンでティーサロンで出されるような上品さ漂うスコーン。ロンドンの方がバターの風味もしっかり感じられるので、わたしはロンドンのスコーンの方が好きだった。英国行きたい!!!
折角なので以前行ったアリス展の写真も。
この展覧会はかなりファンキーな世界だった。
アリスの本だけでなく、映画や舞台など幅広い作品を一つにまとめた展示。
アリスの世界は奥深い。