文庫版『マザー・マーダー』発売
2021年に矢樹純の初の単行本として刊行された連作短編ミステリー『マザー・マーダー』の文庫版が本日、光文社文庫にて発売となりました。
こちらの作品は光文社の電子ミステリー雑誌『ジャーロ』で2021年1月から隔月連載させていただいた全5編をまとめたものです。
第一話の主人公は迷惑な隣人のクレームに追い詰められる若い母親。
第二話の主人公は離婚した元夫の死後、疎遠になっていた娘から夫の遺したあるものにまつわるトラブルを持ち込まれる中高年女性。
第三話の主人公は少々怪しげな引きこもり支援施設で働く若い独身男性……というように、それぞれ視点人物が異なる独立した短編ミステリーでありながら、全てのお話に《ある母子》が絡んできます。そして最終話を読み終えた時に、これらの物語全体にまつわる大きな謎が明かされる――という構成になっています。
連載時に心がけたのは、単行本にまとめた時に読者の方を飽きさせないよう、どれも読み味が異なる短編にしようということでした。
ただ主人公の属性や物語のタイプが違っても、すべてに矢樹らしい《恐怖》や《サスペンス》、《驚きの仕掛け》が盛り込まれています。
代表作であるミステリー短編集『夫の骨』、またご好評をいただいているホラーミステリー『撮ってはいけない家』『血腐れ』を読んで矢樹純を知ってくださった方には、きっとご満足いただける一冊です。
しかも文庫で大変お求めやすくなっている上、購入特典として、刊行時に特に人気の高かった第三話の主人公たちが登場する特別掌編「ろくでなしの消失」をご用意しております(※巻末に詳しい応募要項が記載されています)
『マザー・マーダー』は単行本発売当初から新聞等の書評で多く取り上げていただき、さらには「ダ・ヴィンチ」の《今月のプラチナ本》に選んでいただくなど、かなり評価の高かった作品でした。
こちらは単行本刊行時のポスターですが、【最悪への期待を裏切らない】など、書店員さんからも数々の嬉しいお言葉をいただきました。
2022年には書評家の細谷正充さんが一年のうちに刊行された新刊からジャンルを問わず優れた5冊を選出する《細谷正充賞》を受賞しています。
ですがおそらく自分の作家としての知名度の低さから、世間には認知してもらえず、重版には届きませんでした。「こんなに面白く書けたのに……」と、正直悔しかったです。
このたび『撮ってはいけない家』などのホラーミステリー作品が評判となったタイミングで文庫版を出せたことで、矢樹純という作家を知らなかった方にも手に取っていただけるのではないかと、淡い期待を抱いております。
帯にはフォロワーの日々の悩みや不安に寄り添うポストで大人気の精神科医Tomy 先生が素晴らしいコメントを寄せてくださいました。
また解説は賞を授けてくださった細谷正充さんが引き受けてくださいました。
漫画原作者時代の経歴から最新作の『撮ってはいけない家』についても触れていただいており、大変読み応えがありながらもネタバレは一切ありませんのでご安心ください。
ぜひ多くの方に手に取っていただけるよう願っております。
皆さま、どうぞよろしくお願いいたします。