【エンタメ日記】『朽ちないサクラ』『ルックバック』『隣人X 疑惑の彼女』編 2024/06/17~06/28
2024/06/17(月)
【U-NEXT/邦画旧作】『隣人X 疑惑の彼女』
見た目は人間そっくりな別の存在が日常に紛れ込んでいるという王道パターンのSFミステリー。そんな異星人Xを探す雑誌記者の男と、X疑惑のある女のラブロマンスが主軸なのだが、そもそもXについての情報が少なすぎる。いや、メタファーのつもりなのはわかるけど、Xと人間の見分け方すら不明なのだ。それでいて雑誌編集長は「Xの証拠を取ってこい!」とか怒鳴っているわけで、ただのバカでしかない。いきなり「Xは鉄塔の近くに住んでいる」とか言い出すし、後半になってDNA鑑定すればいいじゃんと思いつく散々ぶり。どうもXは接触した人間の身体を乗っ取るらしいが、ではX疑惑のある人物に子供時代の記憶が残っているのはどういうことか、あるいは本人にXの自覚があるのか、ある程度の推測はできるが基本不明。これではメタファーのはるか手前で思考を停止せざるをえない。X疑惑が報じられた一般人の自宅にマスコミが押し寄せるなど、手垢のついた貧相な描写ばかりで出来上がっている。キャリアのある監督とメジャーな役者を揃えておいて、なんでこれ?
2024/06/25(火)
【邦画新作】『朽ちないサクラ』
TOHOシネマズ日比谷で鑑賞。
複雑に絡んだ一連の事象どころか、個人の感情さえも、全ては誰かの手のひらの上で思い通りに転がされていただけだった。実は究極のトロッコ問題だったという種明かしを含め、何やら社会学の講義を受けているようだが、ここまで純然たる構造主義は時代遅れのような気もする。そんな窮屈な世界に風穴を空けるアイテムのはずの「おみくじ」が、あまり納得できる使い方になっていなかったのが残念。『名探偵コナン』とか『VIVANT』とか、なぜかフィクションではやたらと英雄視される公安を、きわめて悪辣なものとして取り扱っているのは溜飲が下がるが。
2024/06/28(金)
【洋画新作】『マッドマックス フュリオサ』ジョージ・ミラー監督
TOHOシネマズ池袋・スクリーン3で鑑賞。適当な時間にシネコンに行ってちょうど上映開始すぐの作品を何であろうと鑑賞する通称「斎藤工チャレンジ」による1本。ちなみに到着が5分遅れていたら『オペラ座の怪人』4Kレストア版になっていた。なお、すでに観ている作品は除外してもいいというマイルールは設定している。
熱心な方々によって語り尽くされている作品なので、面白かったという一言だけで。音楽の使い方が素晴らしい。
【邦画新作/アニメ】『ルックバック』
グランドシネマサンシャイン・スクリーン5で鑑賞。噂では1700円均一だと聞いていたのに2000円払ったので何でだと思ったらビエスタだからだった。
圧倒的に実力が上であり妬みの対象だった相手から純粋な羨望を受けるというアンバランスな関係性を通じて、人と人はどうしようもなく関わっていくし、人は人に否が応でも影響を与えてしまうという純然たる事実を、綺麗事ではなく赤裸々にしていく。その果てにある最悪の悲劇は、フィクションの力によって塗り替えてしまおうと試みられるが、しかし限界はあり、それでも未来へ進むために小さく後押しをして終わる。事実の物語化(悲劇的な事件事故にフィクションの物語を付加して救済とする所作)を万能視するような、ある種のハリウッド的な価値観を懐疑的に捉えているあたりに、藤本タツキの本質があるのかもしれない。
なお、映画そのものとは別の件で思うところを、別記事で書きました↓
2024/06/29(土)
この日より神保町シアターで「一度はスクリーンで観ておきたい――
忘れられない90年代映画たち」という特集上映が始まった。90年代のテレビ局製作の映画はデジタル化されていないためにDVDにも配信にもなっていないものが多く、それらはフィルム映写機のある映画館でしか観られない。実はかなり貴重な機会なので、上映作品をなるべく観ることに決めた。まずは『就職戦線異状なし』から。後日、まとめて感想記事をUPする予定です。