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入浴委譲(410字)(1分で読める小説)


世の中にはお風呂が嫌いな人がいる。
ある汚ならしい男が私に、
「自分の代わりにお風呂に入って欲しい」と言う。
不思議に想い訊ねると、
男は一枚のカードを出して、
「このカードは他人に入浴を委譲する事ができ、
自分が入浴した同じ効果が得られる」と言うのだ
「ただし、此処の銭湯でないと効果がなく
この銭湯に入って欲しい」
と、カードを差し出して懇願してくる。

カードには[入浴委譲券]と書いてあり
…そんな馬鹿な事があるのか?…
と、想いつつも男からの入浴委譲を引き受ける。
ここの入浴料金は、かなりの高額であるが、
人助けと想い快く引き受けてしまう。

入浴を終え外に出てみると、私の目に飛び込んできたのは、
さっぱりと爽やかに変化した男だった。

「本当にお風呂に入ったみたいだ」
と、男は喜こびを隠せ無い。

それから何日もの間、私は入浴委譲を受け入れた。
高額の料金を支払いながら私は、入浴し続けた。

後に判明したのだが、この男はこの銭湯に
雇われた詐欺師だった。

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