可笑しなお菓子(ユニシロシリーズ)(3分で読める小説)(1500字)
「クリスマスは色んな物が売れたな。
おかげで商売大繁盛。
特にあの[ジンジャークッキーイブ]の
お菓子がよく売れたな。」
と、店主が話しかけているのは、あの女性店員。
店主の言葉を聞いているのか、
いないのか、彼女の表情が全く変わらない。
「今度、この様なお菓子を売り出したいな。
品名は[可笑しなお菓子]これを食べると、
可笑しな事が起こるお菓子だ。
売れるぞ、きっと。
ねえ、君の知り合いの魔法使いの叔母さんに
作ってもらえないかい?」
と、店主は女性店員の松原の顔を覗き込む様に言う。
「[可笑しなお菓子]ですか?・・・
魔法使いの叔母さんにですか・・_・」
と、気の乗らない言い方だ。
「作ってもらってくれよ。
君と魔法使いの叔母さんは友達だろう」
と、にこやかに愛想を込めて女性店員に言う店主。
「可笑しな事って、どんな事でしょう?
人それぞれ違いますから・・」
と、やる気の無さそうな冷たい返し。
「食べた人が面白いと思う事が、面白い事だよ。
食べた人まかせでいいよ。だから魔法使いの叔母さん
に、頼んでくれよ。お願いだからさ」
と、熱い思いで懇願する店主。
「一度、魔法使いの叔母さんの所に行ってはみますが、
期待しないでくださいね。」
と、彼女の答えはイヤイヤだった。
それから数日後のある日。
鉄仮面の女性店員が、
「店主サン。これが[可笑しいなお菓子]です。
昨日、購入して来ました。これを食べると面白くなる
そうです。でも食べ過ぎると危険だと言う事です」
「そうか!あの魔法使いのおばさんが作ってくれたのか!
君、食べてみたかい?試食はしなかったの」
「私は、試食はしてはいません。先ずは店主さんが
食べてみてください。一つ食べれば充分可笑しくなるはずです。」
「僕が試食するのか?何とも無いのか!
このお菓子の原料って何で作っているんだ?」
と、声を荒げる店主。
「それは、魔法使いおばさんが作ったので、
私には解りません。
店主が試食しないと効果が解りません。
是非お食べください。」
と、冷静沈着に言う女性店員。
「う〜んマンダム。じゃ、ひとつくれ」
と、嫌そうに手を差し出す。
女性店員は袋の中から一枚の5cmぐらいの
丸いクッキーを出してきた。
一見すると、何処にでもありそうなクッキーである。
「一枚食べれば、効果あると思います。」
と、差し出してくる。
クッキーを握りそれを見つめる店主。
「美味しそうだね。一口食べてみるか。」
と、独り言の様に言いながら、
クッキーをひとかじりする。
「う〜ん、なかなかいけるよ。美味しい。」
と、感想を言いつつ、一口で頬張る店主。
「どう、美味しいですか?」
と、心配そうに聞く女性店員。
「美味しかったけど、何も面白く無いよ」
「そうですか。でも店主の顔が笑っていますよ。」
「笑ってる?僕の顔が!今僕笑ってなんかいないよ」
「でも口角が上がって、微笑んでいますよ。
それはいつもの事ですね。
お客様が来ると、この顔になりますね」
「そう、お客様の前ではなるけど、君の前ではならないよ」
と、言う店主であるが気になるのか、
鏡で自分の顔を写し出す。
「本当だ!笑っている?何でだ!面白くも無いのに。」
と、叫んでいる。
…やはり失敗だったか!
笑いキノコでクッキーを作ったのは。
だって、魔法使いのおばさんに
[可笑しなお菓子]を作ってと頼めないから。
笑いキノコとクッキーの材料を魔法瓶に入れて
作ったけど、ダメだったか…
と、悔やむ女性店員松原千恵子であったが
「でも、工夫する価値はあるわ。今度こそ作ってみせる
[可笑しなお菓子]を!」
と、決意に燃えていた。
可哀想なのが店主。
口角を上げたまま、効果が切れるまで
暮らさなければいけない哀れな店主。
日頃の行いのバチが当たったみたいだ。