(新々)三つ子の魂百までも(31)
「そう、あれはね。・・・。」
と、言って裕美さんは、静かに目を閉じた。今起きた事を思い出しているみたいだ。
「私が霊と会話したのは、・・・・・。
あの殺人鬼、・・・・・。
一家三人を惨殺した男。
そいつと、会話したの。」
男三人は驚きの余り沈黙。
目を閉じたまま話を続ける裕美さん。
「その男、許せない。・・・・。
幼い子供まで殺すなんて!
そいつは・・・・・強がっているけど、・・・臆病者よ」
「臆病者?・・・」
と、林田がつぶやいた。
僕は、傍にいる裕美さんの顔を真剣に見詰めている。
愛おしくて裕美さんを
抱きしめたくなるが、林田と修がいるのでそれは出来ない。
静かに目を開く裕美さん。
僕と目が合い微笑む裕美さん。
心は喜んでいるのに、目線を逸らし
俯くシャイな僕。
「その殺人鬼の霊と会話したのですか?」
と、林田は聞いてきた。
「会話と言うよりも、交信ね。」
「交信?」
と、疑問を持つ林田。
「そいつは、縛られているから動けないのよ」
「動けない。・・・。」
「そう、動けないのよ。だからそいつの霊は此処には来てないと思うの。
でも、強い力はあるわ。・・・・」
「どんな力ですか?」
と、林田が訊ねる。
「動けないだけに、相手を呪う力と言うか、
脅す力ね。その力は強いと思うよ。
私、考えたんだけど呪うだけで、
人の命を奪う事は出来ないと思うのよ。
判らないけど。」
と、裕美さんの曖昧な考えに
僕は不安を感じていた。
「では、今回亡くなった人は、何故亡くなったのですか?」
と、林田は僕が聞こうとをした事を
聞いてくれた。
「それは、・・・きっと、持病があったからかも知れない。殺人鬼の霊が、橋田君の友達を脅したのかも知れない。
橋田君を脅していた様に、その子を脅したのかも・・・・」
「呪いではなくて、脅しですか?
でも、それって呪いでしょ!」
と、林田は目を丸くして云う。
「呪いではないわ。脅すだけよ!」
と、裕美さんは、口を尖らせて言った。
「どう、違うのですか?呪いと脅しは!」
林田の負けずに口を尖らせる。
「私もよくは判らないけど、呪いなら相手の人を襲うわ。いわゆる憑依ね。
でも、そいつの霊は縛られて動けないのよ。
襲えないと思うのよ。
仮に霊が襲ってきても、人を殺す事が出来るのかな?
妖怪と違うのだから。・_・」