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ある天才科学者の幽霊(7)




「その女性は、少し変わった人で、優秀な科学者に対して資金の援助をしてくれる人なのだ。
ある教授にも多額の資金を援助していた。
私はその教授から、その女性の事を聞いたのだ。
科学の発展の為には、自らの資金を提供し、何の見返りも
求めない。
素晴らしい女性なのだ!
石川もその女性から、援助を受けていた。」


「その人は、日本人なの?何処に住んでいるの?
何故その人はお金を持っているの?
その人と、会った事があるの?」

またもや、矢継ぎ早な質問攻めだ。

「私は、その女性とは会った事は無いが、その教授が、
私と石川を推薦してくれた。
その女性は、ニューヨークに住んでいるらしいが、
日本人の美人の女性と聞いている。
お金を得たのは、アメリカ旅行をしている時に、
ラスベガスで大当たりしたらしい。
本当だったら、羨ましい話だ」

「そう、博打で得た金ね!だから、気前がいいのね。
納得だわ。で、その女の名前は?
それと、その教授の名前は、何て言うの?」

「その女性の名前、大島玲子と言っていたな。
でも、本名ではないらしい。何故偽名なのかは知らない。

教授の名前は、小山内カオル先生だ。
私の尊敬する、数少ない人だ
弟子に殺されてしまったが。本当に悲劇で残念な事だ。」

「裕美、何で、壁をジーと見てるの?
何か、ぶつぶつ言っているし。寝ぼけてんの!
眠たかったら早く寝なさい。もう4時前よ。」

と、壇蜜がビールを片手にパジャマ姿で風呂から出てくるなり
言ってきた。

彼女は、霊感が無い為、この光景は可笑しく思えるのであろう。

「わかったわ。寝るね。この続きはまた今度ね。」
と、私に合図を送るかの様に言葉を出して言った。

「続きって何よ? やっぱり寝ぼけてるのね。」

と、少し嘲笑気味に言っている。

この二人、姉妹と言うが、まるで顔は似てない。

性格も違う様に見える。

裕美と壇蜜はそれぞれのベッドに向かって行った。

テーブルの上に名刺が置いてあるのを発見。
それには、

「リサーチ イイジマ 代表 飯島直美」と書いある。

おそらく、壇蜜の本名は、飯島直美であろう。

私は霊界から下界に来た目的の一つに、大橋の事を知る事であったが、許可書には、大橋の事は書かずにいた。
許可されていない場所に行くと、次回から下界へ行く事が出来なくなると注意を受けている為、大橋の元へ行けない。
「大橋の事を知るのは裕美に聞くしか無い!」


私は寝ている裕美の頭の上を漂って見せた。
私の狙い通り霊感の強い裕美は、私を強引に引き入れてきた。

「やっぱり、私の元に来たわね。さっきの続きよ。
資金源は何処からか出ていたのか、解ったわ。

貴方、石川医師の事を知っているの?
貴方が亡くた日から、どうなったか知っているの?
霊界からこっちを見てましたか?

酷い事になったのよ。」

「酷い事ってなんだ!
私は、霊界にいる時は忙しくて下界の事など気にする時間も無い。
いったい、石川に何があったんだ?」

私は、嘘をついてしまった。

私たち新人は、下界を見る事はできないのだ。
何故なら、思い出深い下界を見ると、脱走霊も出るからである。
閻魔大王に厳しく注意されている為、下界を覗く事はできない。

「そう、何も知らないの?だったら麗華さんの事も知らないね。」

「麗華? 麗華がどうかしたのか?
隠して無いで話しなさい!
話さないなら、呪ってやるぞ!」

と、脅かす様に言ってみせたが、裕美は全く怯える事は無かった。

むしろ、自分から積極的に話してきた。

「石川さん、殺されたのよ。犯人は、はっきりとは判らないけど、
おそらく、ロボットの麗華さん。
修君の推理だと、そうなるのよ。」


「石川が殺された?! 麗華に殺された!?

麗華はそんな事をする女性では無い!
何かの間違いだ!
その、修君って誰だ!」

と、私は霊であるのに、興奮して話している。
生前の私は、これほどまで興奮した事は無い。

不思議である。
魂だけになると素直な自分が出て来るのかも知れない。





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