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ある天才科学者の幽霊(5)


5

朝、裕美は不思議な夢を観た事を思い出しながら、
ベッドから離れる事はしなかった。

今朝、観た夢は何だったのだろう。
夏の日差しは、寝ぼけた目に容赦無く降り注ぐ。

「不思議な夢だった。新美さんが何故私の所にきたんだろう?
確か、新美さんのはずだ。
会った事もない人が、何故私の所に?
私の霊感が、新美さんを呼んだのだろうか?
あの夢が事実なら、新美さんと、石川医師の事は解った。」

と、裕美は寝ぼけてはいるが、自分の考えをまとめることが出来た。
だが、姉には話す事が出来ない。
公ちゃんに話を聞いてもらおう。


新美は、霊界に着くと直ぐに館長の元に行った。
真実を告げようと思っていたのだが、
そのまま、伝えてしまうと、次回下界にはいけなくなるかも知れない。

ここは、曖昧に報告しようと決めた。

「ただいま、帰りました。」
と、私は元気よく館長に挨拶をした。

「ご苦労様。どうだった?久しぶりの下界は、懐かしい人に会えたので、良かったね。あれだけの熱烈の手紙は最近読んだ事がないよ。 君の恋人かい?」

恋人?館長は私の手紙を読んだみたいだ。

私はどの様に応えていいのか解らなかったが、事実を話すのは、
控えた。

「何だかよくは解らなかったのですが、彼女は私に会えて大変喜んでいました。次も会いたいそうです。」

「そうか!君にそんなに会いたい人がいるならば、
許可書を取ると良いよ。そうしたら、いつでも下界に行けるよ。
ただし、下界に降りて行っても、霊感の強い人としか、交信は出来ないだけどね。」


「許可書ですか?初めて聞きました。
どの様にすれば、取れるのですか?」

「取る為の条件は、会いたい人との関係が明確で、相手に危害を与えないのが、条件だよ。

時々、恨んだ相手に危害を与える為に許可書を求める霊があるけど、それをすると、下界で自縛霊になってしまう。
幽霊は、人に危害を加えては駄目なのです」


私は、幽霊が人に危害を与えてはいけない事に驚いた。
生前中は、幽霊は人を呪い危害を与えるものだ!
と、想い込んでいたのだ。
だが、生前中は幽霊の存在は否定していた一人でもあるが。

「そうですか?幽霊は人に危害を与えてはいけないのですね。
では、人の道を踏み外した人を、咎め教え諭す行動は
許されますか?脅かしたり、呪ったりしなかったらいいでしょうか?」

「それは、閻魔大王の判断で決める事で、私には解らないのですが。
一度、許可書の申請をしてみたらどうですか?
すぐに、結果は出ますよ。」

と、言って館長は消えて行った。

私は許可書を書き申請すると、直ぐに下界に行く許可が降りた。
許可書の内容は、割愛するが私は生前から人の心を撃つ文才があった。
閻魔大王の心も、私の文才には心が揺り動かされたのであろう。

これでいつでも私は、下界に降りられる。
タクシーも自分の都合で行き帰りを決められる。

「私は、自由を手に入れた!」と、叫びたい気持ちであった。




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