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不思議なケーキ(二分で読める小説)
最近の夏は終わる事が無いのか?
僕の部屋にはクーラーはあるが、
一日中使っていると、
電気代が心配だ。
だから僕はクーラーの効いた所で、
時間を潰す事を日課にしている。
「ケーキの美味しい喫茶店」最近オープンしたお店だ。
此処の良いところは、サービスデーの時に来ると、
ケーキの試食にありつけるのだ。
貧乏人の僕は、その日を狙っている。
今日はその日、僕は勇んで店のドアを開いた。
客は誰も居ない。試食のケーキは、数に限りがあるので、
早く行って食べないと、無くなってしまう。
この前のモンブランは不味かった。
しかし、二度も失敗はしないだろう。
きっと今日のケーキは美味しいはずだ。
今日は、何のケーキだろう?
僕の期待は最高潮に達していた。
店員が僕のところに持って来たケーキは、
匂いの強いケーキだ。
その匂いは、柑橘系の酸っぱいそうな匂いで
僕の最も苦手な物の様に思えた。
だが、今日はサービスデー。
来たからには、必ず試食をしなければ、
私のポリシーが許さない。
逃げるわけにはいかないのだ。
僕は、覚悟を決め、目を閉じて一口食べた。
酸味と仄かに感じる甘み、意外といける味だ。
酸っぱいが、レモンの酸っぱさほど強くは無い。
もう一口食べた。
今度は、酸っぱさが弱まり、甘みが増した。
三口目は、酸っぱさ感じること無く、甘みだけを感じた。
食べ終えると、口の中に残った香りは、甘さだけだった。
「美味しかったです。不思議なケーキでした。
味が食べる度に変わっていくのです、何故でしょうか」
と、僕は素直に疑問に感じる事を言った。
「そうです。このケーキは、
食べる人の最初は嫌いな味から始まり、そして
最後にその人の好きな味に変わる、
味の変化するケーキです。」
と、店員が不思議なことを言う。
「嫌いな味から始まるって、
もし嫌いな物がなかったらどうなるのですか?」
と、尋ねてみたら、
「嫌いな物が無かったら、何も味がしないケーキですね」
と、笑みを浮かべて言う。
何も味のしないケーキ。
そんな不思議なケーキがあるのか?
僕は、嫌いな味があって幸せを感じていた。