三つ子の魂百までも(21) 4 ボーン 2022年12月7日 13:09 21僕の実家は2階建てで、僕の部屋と両親の部屋は2階にある。玄関を上がり、右手に進むと客間があり、その隣がキッチンで、食事をするテーブルと椅子が置いてある。客間は和室で8畳である。客間とキッチンの間はふすまがしてあり、普段は開いている。客間には背の低い頑丈なテーブルがあり、今日は客間で食事をする予定であったのか、小皿が用意されていた。テーブルを挟み僕達は両親と対面する形で座った。加藤君は、改めて自己紹介をした。両親はまだ動揺しているみたいだ。「お父さん、お母さん、僕達は同じ誕生日で、おない歳なのです。私の知っている人達みんなから、『加藤君と双子ではないか』と言われるのですが…………」と、ここまで話して両親の言葉を待った。父は少し目線を下に向け、母は顔を父に向けた。何かをためらい、何かを考えている様子だ。僕は、次に何を言って良いのか分からない。両親を苦しめているのかと想うと心が痛んだ。しばらく考え込んだ父が、最初に口を開いた。「今まで黙っていたが、公一も大人になったのだから、本当の事を話さなければいけないな。お母さんもそう想うだろう?」母は小さく頷き、「本当の事を言う時が来たみたいですね」と少し涙を浮かべていた。その様子を見た時、僕はこれから伝えられる真実に少し不安を覚えていたが、真実を知りたいと言う気持ちも強かった。加藤君はどの様に想っているのであろうか?表情には変化は見られない。「どこから、話して良いのか分からないが、公一の生まれ頃から話をするよ。」と父は前置きをしてから、「お前が生まれたのは、病院で……。なんと言う病院だったけ?」と、父は母に聞いた。母はもどかしく思ったのか、「公一、今から私が話すことを、心して聞いてね。加藤君もね。」と、腹が決まった言い方をした。「実は、公一。貴方は私達の本当の子供ではないの。貴方は私達の養子なの。でも、誤解しないで、お父さんもお母さんもお前を、実の子と想っているの」と言葉は強いが、母の目からは涙が、滲んでいた。「お前が生まれた時に、お前を産んだ本当のお母さんは、お産の後直ぐに亡くなったのよ。」と、僕の目を見て母は言った。そして、次に言った言葉は、「お前は、三つ子だったの。」「三つ子?」双子かも知れないと想っていたので、双子と言われても驚きはしないが、予想してない事を言われ、僕の頭の中は白い霧に覆われた。(でも、これはいつもの事なので、それほど心配な事ではないと、自分に言い聞かせた。)加藤君を見ると身動きも全く無く、顔色も変わってはいない。「三つ子って言われたわ。貴方の本当のお父さんも子供が産まれたと聞いて、病院に来る途中に事故で亡くなったのよ。その様な事があり、三人の子供達はそれぞれ違う人の養子になったの。」「本当の両親は、もうこの世に居ないのですね」と、加藤君はつぶやいた。表情こそ変えていないが、深い悲しみを懐いての声の様に聞こえた。加藤君の言葉は、実の両親の事を言っているのだが、僕の心には、全く留まらなかった。「私の本当の両親の名前、判りますか?」と 加藤君が、今度はしっかりと力を込めて聞いた。「確か………。書いた紙、仏壇の中に入れてあったね。母さん、そうだったね。」と言いながら父は立ち上がり、仏壇の中を探している。仏壇は客間にあるので、探す姿が見える。「ありました。ちゃんとありました。」と言って、父は嬉しそうに、一通の封筒を僕達に差し出した。それを、母親が受け取って封筒の中から便箋を抜きとった。少し黄ばんだ便箋に、年月の重さを感じる。その便箋には、父の字で書いてあった。父は字を書くのは下手で、字を見たら筆跡鑑定しなくても、直ぐに分かる。書いてある内容は、[父親、佐伯俊夫 享年28歳。母親、佐伯純子 享年24歳。平成8年9月9日に二人とも亡くなる。佐伯俊夫は交通事故。佐伯純子はお産の為。三つ子で生まれてくる。一人は、佐伯さんの身内の人が引き取る事になった。もう一人は別の家族の人に引き取られた。引き取り手の家族は、メモした紙を無くした為分からず。平成8年10月吉日 ]と書かれてあった。 ダウンロード copy #小説 #連載 #Kindle電子書籍 #Kindle出版 #コメディ #双子 #売れないKindle作家 #kindleで販売します 4 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート