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ある天才科学者の幽霊(8)

8

「そう、何も知らないのね。」
と、私を哀れむ様に、裕美は言ってきた。

「貴方が、大橋に殺されてから、麗華さんは、石川医師の所に行ったみたいなのよ。
修君の推理だと、そうなるのね。」

「ところで、その修君って誰だ?」
私は苛立ちを隠せない。
他人に勝手に推理されているからだ!

「貴方、修君知らないの?
修君は、貴方の事知っていたよ。
会った事もあるって言っていたよ。」

「私は、生きていた時は、天才と呼ばれていた。
私を尊敬し、私に憧れを持つ科学者は大勢居た。
修君もその一人だったのだろう」

と、私は得意気に話をしたが、裕美は聞いてはいなかった。

「修君も化学者で、薬の研究をしてるのよ。
推理力もあるし、今度の事件の解決も修君が居なかったら出来なかったのに、それなのに公ちゃんが、世間では名探偵みたいに言われているのよ!
おかしいでしょ? ねえ、そう思わない!」

と、一方的に言ってくる。
ところで公ちゃんて、誰?

だが、それよりも気になったのは、麗華が石川を殺した事だ。

こころ優しい、道子の脳が石川を殺すことなど考えられない。

「何故、麗華が石川を殺した様に想っているのだ?
麗華はそんな事はしないはずだ!
その修と言う男は、何を考えてその様に推理したのだ!」

と、私は怒りを込めて強く言った。

「修君が言うには、移植した脳の寿命が切れた為、他の人間の脳を移植したのでは無いかと言っていうのよ。
石川医師は、殺されても仕方ない人を、選んで殺したみたいなのよ。それが、反社会的人間だったの。」

「そんな奴の脳を移植したのか?石川は!」

と、私は言葉に詰まった。
この会話は、裕美の脳内で行われている為、裕美しか認識出来ない。
「その人、遺体が見つかった時、首が無かったのよ。
首だけが欲しかったみたいで、綺麗に切り取られていたの。
不思議でしょ?
それから、後三人殺されたの。暴力団の組長二人と、一般人。
暴力団の二人は、首を引きちぎられていたの!

そのニュースを聞いた時から、修君は『殺人者はロボットだ!』
と言っていたわ。

そういえば、修君『麗華さんはロボットだ!』と言っていたわ。
大橋が、『首が180度回転した』と聞いた時から言っていたわ。」

修と言う男、鋭い思考力を持っている人間だな。
麗華をロボットと見抜いていたのか?
普通、大橋の言葉など嘘と思い信用しないであろう。
その、修と言う人間に会いたいという気持ちが目覚めた。

「ところで、大橋はどうしているのか?
私を殺した人間だ!刑務所に入っているだろうけど、
どの様になっているか、君は知らないか?」

と、私は裕美に質問した。
この大橋の事が知りたくて、此処にきたのだが、
裕美には多くの質問され、色んな事をこちらは話してしまった。

「おい、聞いているのか?大橋はどうなっているんだ!」


と、呼んでも返事が無い。
どうやら、寝てしまったみたいだ。
自分の聞きたい事が聞けたみたいで、満足したのであろう。

私はやるせない思いで、裕美の脳内から離れた。

石川が死んでいるならば、霊界の何処かにいるはずである。
先ずは、石川を探そう。
石川に聞けば真相が判るはずである。

私は急いで、霊界に戻った。

久しぶりに「ある天才科学者の幽霊」を投稿しました。

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