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三つ子の魂百までも(11)


11

伊東吾郎と私と姉妹4人で美乃のから依頼された案件をどの様にするか、話しあった。

「顔が、コウに似てるって、どう言うことだ?」
と、伊東さんは、僕に聞いてきた。

「僕も以前、大学で自分と似てる人がいるな〜と思ったことあったのだけど、それ切りでした。」

「もしかしたら、双子かな?」
と、裕美さんが、疑問を持ったみたいに言った。

「でも、僕が双子なんて、両親から聞いていません!そんな事は、無いと思います」
と、キッパリと言い切った。

「いや、コウちゃんの知らない出生の秘密があるかもよ。」
と、好奇心の塊の様に、裕美さんは僕の顔を見て、微笑みながら
言った。
裕美さんの年齢は知らない。僕よりは歳上みたいだが、
僕をからかう様な事を、裕美さんは頻繁にする。
これって、パワハラ?
この前も僕の胸の筋肉が凄いと言って、パンチしてきた。
これって、セクハラ?

僕は男なので、そんな事は言わないが、男女の関係は男に不利である。女性が男性にその様な事をしても許されるが、僕が裕美さんの胸をパンチしたら、警察沙汰にも成りかねない。

「その、ストーカーの身元を調べましょう。そうすれば、コウちゃんとの関係は分かるでしょ。」
と、冷静に直子さんは言った。

ストーカーをストーカーする。
どの様に調べるか?個人情報を探り出すのは、困難だが、元刑事の手に掛かると簡単みたいだ。
直ぐに名前と住所は、判明した。
後は、美乃さんに対するストーカー行為の証拠を掴む事。
これも、毎日デパートに来ては美乃さんを見ているので、
簡単に証拠の写真を撮る事はできた。
この証拠をもとに、美乃さんは、刑事訴訟をするかどうかを決めることになる。
美乃さんは、刑事訴訟は考えておらず、ストーカー行為だけ
辞めてもらいたいと言う要望であった。

ストーカー男の名前は加藤修。

いつもの様に、加藤修はデパートの化粧品売り場の近くで、
美乃を見ている。ストーカーの様な嫌な目付きでは無い。
憧れを持った、優しく美乃を見守る様な菩薩の様な眼差しである。
此の様に観てくれる人でも、女性は気持ちが悪く感じるのか?
ストーカーをしている、加藤修君が気の毒に思えた。

加藤修は一流企業のサラリーマン。
伊東は加藤君に会い、元刑事の風格で
「君は加藤修君ですね。少し話しがあるのだが、ちょといいかね」
と凄みのある言い方で擦り寄りながら、言った。

加藤君は不意をつかれたのか、また、その凄みに圧倒されたのか、
何も言わずに、連行される様に伊東に従って私の所に来た。
彼を間近で観てビックリした。本当によく似ている。
以前、大学で会った男だ。

三人でデパートの中にある、喫茶店に入った。

加藤君は怯えて居る。少し震えている。臆病な人みたいだ。
だが、悪い人には見えない。
私がマスクとサングラスをしているので、余計に怖いのだろうか?

喫茶店内には何人かお客はいたが、私たちはお客から離れた所の席に座った。

ウエートレスが注文を取りに来た。
「コーヒーを三つ頼む」
と伊東が誰に相談する事も無く、勝手に決めて言った。
その声を聞くだけで、ビビるであろう。
加藤君は何も言わない。言えないのかも知れない。

「君は以前から、このデパートに来ては、ある女性を監視しているね」
と、伊東は単刀直入に切り込んで込んできた。
勿論だが短刀は持ち合わせては、いない。

「なんの事ですか?私はそんな事はしていません」
と言う言葉が、弱々しい。少し涙ぐんでいる。

「なるほど、自分のしてる事に気づいていないのか?では、これを見せよう」

と言って、美乃さんを見つめている加藤の写真を何枚も見せた。
 
「これは、君だね。私が調べただけでも、毎日来て彼女を見ている。彼女は嫌がっている。だが、『彼女は警察沙汰にはしたくない』と言っている。そのストーカー行為をやめてくれるか?」

「ストーカー?僕がストーカー行為をしてる?
そんな事はしていません!何かの間違いです。」
と急に強気になった。

「君はしていないつもりかも知れないが、彼女は嫌がっている。
それを、セクハラというんだ。今後しないと約束するならば、
大袈裟な事はしない。君の為だ。これ以上彼女に迷惑をかけるな」

またも、凄みのある声で言った時、コーヒーが運ばれてきた。

加藤君は下を向き泣いている。

「三浦さんは、嫌がっているのですね」
とショックを隠せない。

加藤君の気持ちが、よく分かる。
片想いは僕も子供の頃からよくしてきた。

♪放課後の校庭を走る君がいた、遠くで僕はいつでも君を探してた
と言う村下孝蔵の歌詞が浮んだ。
これも、ストーカー?

加藤君は本当にショックを隠せ無いと言う表情で、
「もう、三浦さんには近づきません」
と言って、逃げる様に喫茶店を出て行った。

一応、この仕事は終了した。でも、加藤君の事が気掛かりでならない。僕に似ていると言うことだけでは無く、もっと加藤君を知りたくなった。

次の日、美乃さんに案件の報告をした。

「ありがとうございます。ホッとしました。『もう来ない』と言ってくれたのですね。でも、また同じ様に来ていたら連絡しますね」

「もう、貴女の所には行かないと思いますよ。」
と僕は、複雑な気持ちで言った。

「なんで分かるの。男の勘?」
と裕美さんは聞いてきた。

「加藤君の三浦さんを見る目は、いやらしい目では無かった。
憧れた人を守ってあげたいと言う目だった。
だから、加藤君は自分がストーカーしていると聞かされ、貴女からも嫌われ、警戒されていると言われたら、ショックで立ち上がれないと思いますよ。もう、貴女の所には行けないでしょうね。」

「私の事を好きだったら、私に言ったくれたら良いのに?何故言わないのでしょか?男らしく言って欲しかった。」
と、何故か残念そうに、美乃さんは言った。
もしかすると、気持ち悪さを感じながらも、期待が有るのが女心か?
そういえば、

♪女心はいつも言葉と裏腹な企み隠してる、どんなに遅すぎても
告白待ちわびて生きているの

と、竹内まりやは言っているが、男にとったら女心は本当に厄介である。


「では、もし加藤君が三浦さんに、告白したら付き合いますか?」

と僕は、加藤君の身になって質問した。少し興奮していると自分でも感じた。

「私、男の人で弱々しい人好きじゃないの。」
と美乃さんは、顔に似合わずはっきりとものを言う人だ、
見た目は清楚におとなしく見えるのだが、気持ちをストレートに伝える芯の強い女性かも知れない。

「じゃ、どんなのがタイプ?」
と裕美さんが好奇心丸出しで聞いた。

「強くて、男らしい人。はっきりものが言えて、頼りがいのある人。」

「コーちゃんみたいな人?」
と、聞かれた時、美乃さんは、少し恥ずかしげに

「タイプかも!?」と本気とも、冗談とも取れる言い方をした。

「ダメよ、コーちゃんは私の物だから」と裕美は僕をからかう様に言った。
(僕はオモチャではないぞ!)と心で叫びながらも、嬉しいがっている僕が、そこに居た。

僕ってモテるかも知れない!










懲りずに投稿します。今日二度目です。
売れないKindle 作家ですが、この小説もKindleで販売します。

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