「いやん、ズレてる」と言う彼女は(一分で読める小説)
「ズレてる!」は、
私にとっては、馴染みの言葉。
別段気にすることも無い。
でも、ズレてるの前に「いや〜ん」が付くと凄く気になる。
特に女性の色っぽい声で言われると、尚更だ。
今日、見知らぬ女性が私の顔を見て
「いや〜ん、ズレてる」
と、甘い声で言う
…一体何がズレてると言いうのだ…
気になって、若い見知らぬ女性に聞いてみた。
女性は恥ずかしげに、目を逸らし、逃げる様に私の元を去って行く。
その、後姿を見ながら、私は想いに耽る。
…もしかして?頭か。
頭の中はいつもズレていはいるが、今会ったばかりの女性に
解る訳が無い。
そうすると、頭の上か?
髪の毛か!
カツラがずれたのか?
しっかりと固定されているはずなのに?
何故ズレる。手で確かめたが、気になり鏡の前に行く。
私の心配は杞憂であった。
カツラはしっかりと固定されている。
鏡に映る私のカツラは、一糸乱れる事も無く頭に乗っている。
彼女は一体何が「ズレてる」と言ったのか?
今となっては確かめる事が出来ないのか?
私にとっては、気になる出来事。
先程の見知らぬ彼女に会って確かめたい!
何がズレているのか?
聞いてみたい。
もしかして、イタズラされたのか?
揶揄われたのか?
セクハラか!
今、気づいた!
ズレていたのは、入れ歯だった!