(新)三つ子の魂百までも(22) ボーン 2023年8月14日 18:53 22「死んで間が無いと形にならないのですか?」と、僕が聞いた時、裕美さんが次の写真を出してきた「この写真よ。林田さん、どう思う?」と、裕美さんの真剣な表情がより真剣さを増している。俗に言う怖い顔だ😱林田さんも怖い顔でその写真を見ている。「・・・・・・う〜ん(≧∀≦)」と、一言いい「苦しんでいますね・・・」と、言った。僕には何も解らない、他の人達も怪訝な表情だ。特に母親の友子さんは、涙が頬を伝わっている。その表情を見たらもうこれ以上の詮索はやめた方がいいと僕は感じていた。「裕美さん、正太さんが亡くなったのは事実ですか?」と、僕は小さい声であったが強い気持ちで聞いた「そうです。残念ですがもう亡くなっています。」と、明確に言い切った。友子さんの泣く声が小さいながらも聞こえてくる。……重い雰囲気である。誰かがこの雰囲気を変えて欲しい!……と、僕は願った。祈りは通じるもので、来客を示すインターホーンのチャイムが静かな事務所に鳴り響く。来たのは、美乃と修だ。……そういえば、今日は日曜日。修は休みだ、でも美乃はデパートの勤務時間では無いのか?……対応しているのは、直美さんだ。離れた場所で会話しているみたいで、修達の話の内容は聞こえてこない。「本当に、正太は死んでしまったのですか?」と、父親の正一さんが、自信無さそうに言った。「ええ。」と、小首を縦に動かす裕美さん。正一さんは、瞳を閉じた。「正太を殺した奴は、何者ですか?この前は妖怪って言っていましたが・・・・、そんな物が本当にいるのか?・・・・」と、頭を抱えながら力無く言った。「この次の写真を観てください。」と、裕美さんが差し出してきた。「さっきの苦しんでいる写真の次ですか?この写真も苦しんでいるのですか?どこで苦しんでいると解るのですか?」理解できていない僕は、少し怒りを表す様に、裕美さんと林田さんに質問した。相変わらず、父の正一さんは頭を抱え下を向いている。母の友子さんは、ハンカチで目頭を押さえ写真を見ようとはしない。「これは、霊感の無い人には解らないかも知れません。」と、林田さんは残念そうに言い「僕も以前は、何も解りませんでした。でも修行を積んだおかげで霊感が付きました。このカメラを扱う様になってからです。」「次の写真を見たら解るわ。これは鮮明に写っているわ。正太さんの顔だと思うけど、この写真は何も苦しんではいないわ。ご両親に会えて嬉しそうな表情よ。」と、裕美さんが言った時、父親の正一が頭を上げた。そして、その写真を手に取って見た。「うん、正太の顔に似ている。」と、言った。母親の友子さんも写真を見て、軽く頷いてみせた。「これだけです、写真は。」と、裕美さんがみんなに告げた。他の写真には、霊の写っている写真は無かった。「もう少し鮮明に撮れていたら良かったのですが、申し訳ありません」と、林田さんは、正一さんと友子さんに謝っている。僕は、これだけ沢山の心霊写真を見たのは初めての経験であるだけど、遠慮しないでハッキリと写って欲しい。モヤッと霊が写ると、こちらもモヤッとした感情が残る。それから、ご両親との話しが続く「捜査のレポートに書きますが、正太さんの捜索はこれで終わりにしたいと思います。悲しい結果となってしまいました。ご両親には、信じ難い事だと思います。でもこれ以上の捜索は、亡くなっている以上無理だと感じました。」と、裕美さんは感情を殺した言い方であった。「あの〜。正太の遺体はこの前蒸発したと言っていましたが、事実でしょうか?」と、友子さんが不思議そうに聞いてきた。僕も疑問に思っている事だ「それは、・・・・・私は明確に解っていますが、私の云う事を信じられますか?」と、裕美さんは友子さんに力強い視線を送るその気合いに押されたのか、友子さんは裕美さんから目を背けた。「この事は、私が話しても誰も信じてはくれないでしょう。でも、事実です。今世間を騒がせている犯人の正体は、妖怪です。それも恐ろしい妖怪です。人を熱で殺し、そして蒸発させる妖怪。でも、そんな事を言っても誰も信じ無いし、言った人を狂った人間って思うだけです。でも、真実はそうです」と、裕美さんは、名探偵の様に言い切った。友子さんは何も言わなかった。ただ、深いため息を残していた。正一さんの落胆する姿は、手に取る様に解った。悲しい現実を受け入れなければいけない。裕美さんは、辛い表情で二人を見ていた。……裕美さんは、本当は優しい人なんだ!単なるパワハラ上司では無いんだ!……と、僕は感動していた。https://note.com/yagami12345/n/n595e1d4f3fd0 ダウンロード copy いいなと思ったら応援しよう! チップで応援する #連載小説 #妖怪 #売れないKindle作家 #どうでもいいこと #裕美 #役にも立たない話 #林田 #皿子