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後悔する航海それを公開(2分で読める小説)(780字)
僕達の乗る船はいったい何処に向かうのか?
乗船した頃は目的達成の為に身体全身が燃えたぎり、
使命を自覚しあらゆる荒波も困難も忍耐強く
乗り越えてきた。
そう、僕達の目指す世界は理想郷。
誰もが憧れる平穏無事な理想郷。
その為には僕達独り一人が力をつけ、
お互いがお互いを認めて幸福を目指していく。
その様な想いでこの船を動かし努力を重ね実践してきた。
だが、不幸な事に突然敬愛する船長が亡くなった。
僕達が信頼し、尊敬の念を抱いていた船長が
居なくなってしまった。
悲しみに暮れる船員達。
次の新しい船長を盛り上げる為にも、
純朴な我々は更なる一致団結を誓う。
だが、最近我々が目指す理想郷とは違う方角に
梶が切られている。
ゆっくりと矛先が変わっていく為に、誰も気づかない。
だが、僕の上司は全て判っていたのか
「行き先の方向が変わっている」
と、新船長に伝えたが、船長に逆らったとして
強制的に下船させられた。
あの、新船長に刃向かうと船から降ろされる。
この大海原で下船させられたならば生きてはいけない。
僕にも解る、船の行く方向が変わっていることが。
これをみんなに伝えても、信じてはくれないだろう。
また、反逆者扱いされて強制的に下船させられる。
この船は我々が本来目指した理想郷に向かう事無く
航海している。
そして将来はこの船は、必ず沈没していくであろう。
僕は沈み逝く船と共にこの世を去るのか?
それとも、勇気を持って進言して下船させられた方が
まだ良いのか?
乗船員の人達は、新船長を疑う事もなく
今日も無邪気に活動している。
僕はその姿を見るたびに残念でならない。
乗船員の人達が新船長を盲信する事なく、
真実に気づいてくれる事を心から願う。
あの新船長はいつも腹だして寝る癖がある。
本当に腹だたしい男である。
また、腹黒い男でもある。
腹わたの腐った獅子は、狸狐に笑われる。
お粗末になり下がったこの船は、いったい何だ!