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 霊が撮れる例のカメラ(最終回)


最終回

「そうよ。悲しい事があったのよ。この前、犯人が捕まったと言うニュースが報道されていたけど。
瞳ちゃん、殺されたの。・・・・・
本当に悲しかったわ。」
と、今までの元気がなくなったみたいで、急に悲しい声になった。

「殺された?この女性が。名前が瞳さんて言うのですか?
名前が・・・・」
僕はあの時の違和感が解ける想いがした。

「それで、この男性が修さんですか?」
と、聞いた時、僕の震えは止まっていた。

「そう、この人が修さん。瞳ちゃんのお父さんよ。
昔は、腕の良いカメラマンで、何度か賞も取っていたみたいで、
個展も開いていたのよ。
そのカメラでも撮っていたわ。
私も若い時、撮って貰ったのよ。
ヌード写真を。」
と、自慢気に言ってきた。
今の彼女を観たら信じる事は出来ない想いだった。

「そうですか。腕の良い写真家ですか。
本当に、この男性は亡くなっているのですか?」

「そうなの、修さんね・・・娘さんが殺されてから、・・・
元気が無くなって、はじめは犯人を自分が捕まえると言っていたんだけど、さっぱり、証拠も無いし、目撃者もいないし、警察は頼りにならないし、そのうち、修さん身体を壊して、寝込んでしまったのよ。
修さん、若くしてお嫁さんが亡くなってから男で一つで瞳ちゃんを育てたのよ。
なのにあんな事されて・・・。」
と、また元気がなくなった。
女性の目から涙が滲んでいる。
見ていた僕も涙ぐむ。

この男性は、僕が観た店主に間違いが無い。
だとししたら、僕は幽霊の店主と会話していた事になる。
「僕を店主がこの店に誘って来た」としか想わざるを得ない。

心の綺麗で正直者の僕を、店主が見つけこの店に僕を招き入れたのだ。
他の客が誰一人来なかった訳も理解できる。
そして、店主は僕に犯人の写真を撮らせた。

この様に考えれば、全ての辻褄が合う。

僕は恐怖を感じるよりも、店主の役に立つ事が出来た事に大きな満足を得ていた。
人の為に尽くせる事ほどの、喜びは無い。
誰かが自分を期待してくれるだけでも嬉しく有難い。


会社では何の役にも立たない僕を、店主は見出してくれた。
本当に店主に感謝したい。
店主のあの笑顔が、また浮かんできた。
喜びの眼差しで僕を観ているはずだ。

きっと喜んでいてくれる。
「ついに僕は人の役に立てたぞ!」
と、大きな歓声を上げた。
今は霊となってしまった店主に向かって。


         完
追伸
その後、林田智は霊界を撮るカメラマンとして名を馳せて行くのである。

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