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(続)三つ子の魂百までも24


24

「石川さんですか、・・・。」
と、広田美枝子さんは少し考え込んだ。勿体ぶっているかの様に。
少し間が空き、広田さんは言った。
「新美君と似ているかな。あまりお喋りではないけど、冷たい人では無さそうです。あまり、親しくは無いので、ハッキリとは言えないのですが。」
「先程、石川さんに電話したと言っていましたが?何を話されたのですか?」
と、裕美さんらしい、質問である。

「あの時の電話で喋った事は、・・・・」と思い出しているのか、考え込む様に携帯を見つめた。
「いつ、電話したのですか?」と、イラだったのか立て続けに裕美は聞いた。
「その、電話した日は新美君が死んだと聞かされた時です」
と、キッパリと言った。

「そうですか。辛い事を思いださましたね。申し訳ございません」
と、直美さんが落ち着いた声で言った。

「その時、石川医師はどの様な事を、話されましたか。
びっくりしてましたか?」
と、裕美さんの追求が止まらない。
でも、いつもの好奇心の塊の言葉では無く、何かを知っていて、
確認している様な感じがした。
「あの時、石川さんに『新美君が死んだ』と言ったのですが、
非常に冷静な態度でした。知っているみたいに。医師同士で連絡取りあっているみたいで、新美君の事を知っていたのかな。驚いた声では無く冷静な声でした。」

「でも、その頃は、今までの病院には居なかったのでしょ。
今はどこの病院にいるのでしょうか?」
と、裕美さんは、一人ごとの様につぶやく様に
広田さんに質問した。

その時である、広田さんの携帯電話が鳴った。
見ると、石川医師からである。
あまりの、タイミングの良さに僕は、感動を覚えた。

広田さんは直ぐに電話に出た。

普通の挨拶をした後、広田さんは、石川医師に質問した。
「石川先生、この前の病院はお辞めになったのですか?」
「・・・・・・・」
と、石川は何か言っているが、聞こえない。
スピーカーにしてもらいたかったが、そこまでは要望出来ない。
次に、広田さんは、矢部道子さんの事を聞いた。
「・・・・・・」
と、石川医師は話しているが、全く聞こえない。
裕美さんを、見ると瞑想している。
まさか、眠っているのでは無いはずだ。

伊東さんを見たら、眠むそうだった。あくびもしている。
修は真剣な顔で、電話している広田さんの後ろ姿を見ていた。
直美さんは炊事場でお茶を淹れている。
お菓子もあるみたいだ。

数分間電話での会話が続いたが、話はついたみたいで、広田さんは電話を切った。

広田さんが云うには
「石川先生は、以前の病院を辞めて他の病院にいるとの事でした。
その病院の名前は、◯◯病院です。そこだけにいるのでは無く、
色んな病院を掛け持ちしている、と言ってました。
矢部道子さんの事は、知らないと言ってました。」

「そうですか、『矢部さんの事は知らない』と言われたのですね!」
と、静かな口調であるが、強い気持ちを込めているかの様に、
裕美さんは聞いた。

「ええ、『知らない』と言ってました。でも、石川先生のその言葉に、・・」
と、その後の言葉を思案しているかの様に、または勿体ぶっているかの様に広田さんは、言葉を飲み込んだ。

「その言葉に躊躇いがあったのではないですか?もしくは、動揺したか?もっと云うと、嘘をついているかの様に聞こえたのでは
ないですか?」

と、いつも裕美さんとは違い真剣な想いが此方にも伝わってくる。
「嘘をついているかどうかは判りませんが、躊躇した事は間違いないです。少しびっくりしたみたいでした。」

「そうですか。びっくりしてるみたいでしたか。」
と、裕美さんは、自分の思っている事が確認出来た様に言った。

「で、その石川医師の現在の居場所、判りますか?
それと、連絡方法を教えてもらえませんか?」
と、今まで眠そうだった伊東さんが刑事の様に低い声で、
聞いた。

その迫力に押されたのか、広田美枝子さんは、石川先生の電話番号を伊東さんに告げた。広田さんは個人情報保護について、無頓着みたいだ。

「それと、あの佐伯と云う男の事知らないかね?
広田さんは、あの男を嫌っているみたいだったが、もう少し
教えてくれないか?」
と、伊東の言葉は上から目線で横柄に聞こえる。

その時、直美さんが、お茶とお菓子を運んで来てくれた。





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