(続)三つ子の魂百までも24 1 ボーン 2022年10月30日 02:35 24「石川さんですか、・・・。」と、広田美枝子さんは少し考え込んだ。勿体ぶっているかの様に。少し間が空き、広田さんは言った。「新美君と似ているかな。あまりお喋りではないけど、冷たい人では無さそうです。あまり、親しくは無いので、ハッキリとは言えないのですが。」「先程、石川さんに電話したと言っていましたが?何を話されたのですか?」と、裕美さんらしい、質問である。「あの時の電話で喋った事は、・・・・」と思い出しているのか、考え込む様に携帯を見つめた。「いつ、電話したのですか?」と、イラだったのか立て続けに裕美は聞いた。「その、電話した日は新美君が死んだと聞かされた時です」と、キッパリと言った。「そうですか。辛い事を思いださましたね。申し訳ございません」と、直美さんが落ち着いた声で言った。「その時、石川医師はどの様な事を、話されましたか。びっくりしてましたか?」と、裕美さんの追求が止まらない。でも、いつもの好奇心の塊の言葉では無く、何かを知っていて、確認している様な感じがした。「あの時、石川さんに『新美君が死んだ』と言ったのですが、非常に冷静な態度でした。知っているみたいに。医師同士で連絡取りあっているみたいで、新美君の事を知っていたのかな。驚いた声では無く冷静な声でした。」「でも、その頃は、今までの病院には居なかったのでしょ。今はどこの病院にいるのでしょうか?」と、裕美さんは、一人ごとの様につぶやく様に広田さんに質問した。その時である、広田さんの携帯電話が鳴った。見ると、石川医師からである。あまりの、タイミングの良さに僕は、感動を覚えた。広田さんは直ぐに電話に出た。普通の挨拶をした後、広田さんは、石川医師に質問した。「石川先生、この前の病院はお辞めになったのですか?」「・・・・・・・」と、石川は何か言っているが、聞こえない。スピーカーにしてもらいたかったが、そこまでは要望出来ない。次に、広田さんは、矢部道子さんの事を聞いた。「・・・・・・」と、石川医師は話しているが、全く聞こえない。裕美さんを、見ると瞑想している。まさか、眠っているのでは無いはずだ。伊東さんを見たら、眠むそうだった。あくびもしている。修は真剣な顔で、電話している広田さんの後ろ姿を見ていた。直美さんは炊事場でお茶を淹れている。お菓子もあるみたいだ。数分間電話での会話が続いたが、話はついたみたいで、広田さんは電話を切った。広田さんが云うには「石川先生は、以前の病院を辞めて他の病院にいるとの事でした。その病院の名前は、◯◯病院です。そこだけにいるのでは無く、色んな病院を掛け持ちしている、と言ってました。矢部道子さんの事は、知らないと言ってました。」「そうですか、『矢部さんの事は知らない』と言われたのですね!」と、静かな口調であるが、強い気持ちを込めているかの様に、裕美さんは聞いた。「ええ、『知らない』と言ってました。でも、石川先生のその言葉に、・・」と、その後の言葉を思案しているかの様に、または勿体ぶっているかの様に広田さんは、言葉を飲み込んだ。「その言葉に躊躇いがあったのではないですか?もしくは、動揺したか?もっと云うと、嘘をついているかの様に聞こえたのではないですか?」と、いつも裕美さんとは違い真剣な想いが此方にも伝わってくる。「嘘をついているかどうかは判りませんが、躊躇した事は間違いないです。少しびっくりしたみたいでした。」「そうですか。びっくりしてるみたいでしたか。」と、裕美さんは、自分の思っている事が確認出来た様に言った。「で、その石川医師の現在の居場所、判りますか?それと、連絡方法を教えてもらえませんか?」と、今まで眠そうだった伊東さんが刑事の様に低い声で、聞いた。その迫力に押されたのか、広田美枝子さんは、石川先生の電話番号を伊東さんに告げた。広田さんは個人情報保護について、無頓着みたいだ。「それと、あの佐伯と云う男の事知らないかね?広田さんは、あの男を嫌っているみたいだったが、もう少し教えてくれないか?」と、伊東の言葉は上から目線で横柄に聞こえる。その時、直美さんが、お茶とお菓子を運んで来てくれた。 ダウンロード copy いいなと思ったら応援しよう! チップで応援する #小説 #言葉 #組織 #電話 #コメディ #サスペンス #売れないKindle作家 #整合性 #いい加減な話 1