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ジンジャークッキーイブ(後編) #毎週ショートショートnote(ユニシロシリーズ)(三分で読めます)

僕は、願いを叶える為に、
もう一度この不味いお菓子の
[じんじゃクッキー]
購入しようと、ユニシロに歩を運んだ。

今日は、高身長の愛想の無い女性店員は居ないみたいで、
にこやかな小太りの男性が、
揉み手をしながら僕を迎えてくれた。

その男は、この店の店主であると言う。
僕は、じんじゃクッキーの事を店主に質問してみた。

「このお菓子は、物凄く不味いのですが、
本当に売れているのですか?
クリスマスイブの日にこのお菓子を完食すると、
本当に願いが叶うのですか?」
と、少し声を強めて言ってみた。
「このお菓子、そんなに美味しく無かったですか?
その様に言ってくるお客様は、当店にはいらっしゃら無いのですが・・。
ただ、味覚は人によっては変わるので何とも言えませんが、そうですか・・」
と、残念そうに呟いた。

「でも、願い事が叶うかもしれません。何しろ有著な神社が丹精込めてご祈念したお菓子なので間違いが無いと思います。ただ・・ちょっと・・・
いや、この後は言わずにおきます」
と、奥歯に何か詰まったみたいな言い方だ。

僕は非常に気になったが、武士の情けと思い言及するのは控えた。
「もう一つ、このお菓子をください。イブの日に食べるので」

店主はにこやか表情で、
「これはサービスしておきます。願い事が叶うと良いですね」
と、無料で[じんじゃクッキー]を手渡してくれた。

僕はクリスマスイブを待ち箱の蓋を外した。
その中に短冊が入っていて
[このお菓子を完食した後、
願い事を書いてください]と、書いてある。
この前購入した箱にはこの様な短冊は無かったのだが・・。
そして僕は意を決してお菓子を食べ始める。
「不味い。こんなに不味いお菓子初めてだ!
我慢だ、神は乗り越えられない試練を与えてはいない!」
と、鼓舞しながら僕は食べ続けた。
吐きそうになるが、吐いてしまっては元も子も無い。
我慢に我慢を重ね、やっとの思いで食べ終わる。
そして僕は願いを短冊に書く。
「社内一美人の谷川恵美さんと両思いになれます様に」
と、強い思いで紙に書き神に祈る。
ふと、箱の底を見ると文字が書いてある。


それには、[願いが叶うか叶わないかは、運によりますが、
あなたは、この不味いお菓子を心折れる事も無く完食しました。
あなたはこれからの人生で嫌な事があったとしても、
充分に乗り越えられるはずです。
あなたに幸運が訪れる事を祈ってます」
と、書かれてある。

「そうだ、僕はどんなに辛くても、乗り越えていける自信を
このお菓子を食べる事で得られた!」
と、何故だか満足する私がそこに居た。


「店主さん、良かったですね。あんな売れ残りの不味いお菓子。
全部無くなって。処分するのもお金が
掛かりますから」
と、女性店員がぶっきらぼうに言う。

「そうだね。パッケージを変えるだけで、何故か売れたね。
ネーミングも良かったのかな。」
と、ほくそ笑む店主がそこにいた。

長くなって申し訳ないですが、完結させたかったので掲載しました。

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