三つ子の魂百までも(20) 2 ボーン 2022年11月30日 04:06 20遂に運命の日がきた。僕は自動車の免許は持ってはいるが、あまり自動車の運転は、得意ではない。マイカーも持ってはいない。遠くへ行く時は電車を使うのでマイカーは必要がない。だが、実家は交通の便が悪く、電車で行くよりも、自動車の方が便利である。僕は加藤修君と待ち合わせ、加藤修君の運転で実家を目指した。加藤修君は仕事がら、自動車に乗る機会は多いと言っている。加藤修君は研究室に篭って新薬の開発をしてはいるのだが、外に出る機会も多く、その時は自動車を使うとの事だ。「僕の両親、加藤君を観たらビックリするだろうな。どの様な反応するだろうか?」「僕は養子だけど、戸籍には実際の両親の名前は書いて無かったんだ。何故 両親は、僕に養子と伝えたのだろうか?その事が僕には理解出来ないのです。」「隠している事が辛かったのかも知れないですね。もしかすると、今日、私達の秘密も判るかも知れないですね。チョット恐怖を感じているだけど。ドキドキするな。親がどんな話をするか、どうか解らないけど。ドキドキだよね。」と、僕は素直な気持ちを、加藤修君に告げた。加藤修君は運転しているので、僕の方を見なかったが、首を縦に動かし、同意の気持ちを表してくれた。都会の街並みから離れ、田園風景に変わって行った。僕の実家はビルが立ち並ぶ街の中では無く、静かな田園の広がるのどかな場所にある。僕達の乗った自動車が、実家に近づいて行った。近づいてくるたびに、僕の胸の鼓動が、早く大きくなる様に感じる。大学時代、柔道の試合では、たびたびあったが、最近では珍しい。父親の職業は、自動車のセールスマンである。現在は、営業所の店長で、責任の重い役職に就いてはいるが、見た目は、偉そうには見えない。だが、真面目人間で、冗談も言う事も無く、誠実な人柄が、自動車のセールスマンに向いているみたいで、多くのお客さまに信頼されている。母親は、主婦ではあるが、近くのスーパーでパートで働いている。母親は、父とは違い雄弁で冗談も上手く、ボケ、ツッコミも素人とは思えないぐらい上手く、一緒にいて、飽きさせる事も無い楽しい女性である。そろそろ、実家に近づいて来た。あの、薬屋の角を左に曲がれば、見えてくる。実家に帰るのは久し振りで、少し懐かしい気がするが、これほど緊張を感じての帰省は、初めての経験である。昼食を用意すると母は言っていたので、朝飯は食べずに来た。おかげで、お腹だけは緊張感が無い。時刻は、11:48 いざ、決戦。自動車を自宅の隣の路上に停めた。都会と違って交通量が少なく、どこに停めても駐車違反にはならないのが、田舎の良いところだ。玄関の前で深呼吸を3回して、元気良く扉を開けた。加藤修君は僕の後ろに隠れる様にひっそりとしている。彼も緊張しているのであろうか?「帰りました。お母さんいるの?」と大きな声で呼んだ。しばらくすると、母がエプロン姿で出てきた。「お帰りなさい。」と言いながら、僕の顔をチョット見ただけで、連れて来た人を探している。母は訝しげに「お連れさんは、どこにいらっしゃるの?」両親は、僕が会わせたい人がいると言っていたので、恋人を連れて来ると思っていたみたいだ。加藤修君は僕の背後から、音も立てずにス〜と、僕の横に並んだ。驚いたのは、お母さんだった。完全に焦り浮ついた声で「ドッペル……………。え〜と何だっけ?」とうる覚えの言葉を口にしたが、正確に言えない。「そう、ドッペル将軍!」と言って僕達の方にゆびを指してきた。(ドッペル将軍って何?)と、ツッコミを入れたかったが、急に言われてもこちらも言葉が出ない。「お父さん、お父さん、早く来て!」と今度は、お父さんの連呼。父は何事が起こったのか分からず、慌ててやって来て僕達を見て、「ドッペルゲンガーか?」と正確な発音で言ったが、顔は少しひきつっている。少し間があき、二人は落ち着きを取り戻したかの様に見えた。「紹介します。僕の友達の加藤修君です。今日は、お父さんとお母さんに聞きたい事があって、加藤君を連れて来たんだけど。」と両親に告げたが、二人はまだ動揺している。「こんなところでは、話も出来ないので、上がって下さい」と父が言った。だが、言葉は動揺を隠せない。案内されたのは、客間であった。 ダウンロード copy #小説 #Kindle出版 #両親 #復帰 #売れないKindle作家 #コメディ小説 #三つ子の魂百迄 #養子 #ペイソス #ドッペル #kindleで販売します 2 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート