
なぜ投資を怖いと感じるのか
「投資っていうとどうしても一歩が踏み出せない。だって怖いものなんでしょう?」
……投資というと、どうしても怖いものという印象がある人が多いようです。
私は元々大学で金融を専攻していたこともあり、投資にそこまでの抵抗はありませんでしたが、それでも初めて投資信託を買うときは少しばかり緊張したものです。
ではなぜ投資が怖いという印象を抱く人が多いのか。その理由は3つあるものと思われます。
1. 投資はギャンブルみたいなもの
「投資はギャンブル」と思っている方も多いのではないでしょうか。その一面があることも否定しません。株価が上がるか下がるかは不確定なものですからね。未来が分からないのと同じです。
しかし未来が分からないという点では万事が同じであり、将来インフレが起こるかデフレが起こるか、それにより現金の価値が上がるか下がるかも分からないのも同じことです。結局未来の不確実性はこの世の物事すべてにおいて変わりません。
「いやそういうことじゃなくて、株をやる人って何の根拠もなしに上か下かを決めるんだろ。そういう50:50みたいのがギャンブルみたいで怖いんだ。」
このような意見もあると思います。
これについてはいわゆるデイトレードに代表される短期取引と、半年以上同じ銘柄や投資信託を保有し続ける中長期投資によって答えが変わります。
まずデイトレードなどの1日以内~数日で行われる短期取引ですが、これはそもそも投資ではなくて投機であることが多いです。何が違うのかというと、
「投資」→慎重な分析に基づき元本の安全性を確保しながら、適正な収益を得るような行為
「投機」→市場に対するギャンブル的な要素が強く含まれる行為。信用取引やFXも含む
※ベンジャミン・グレアム「賢明な投資家」より引用
となります。
投機の場合でもチャートの形などを分析して勝てる法則を導き出し、それに従って取引することで儲けているので完全に50:50の勝負とはなりませんが、ゲーム性が強いという面においては確かにギャンブルのようなものと言えるかもしれません。
一方今回皆さんに提示しているのは「投資」の方です。
例えば個別株の場合、世の中の動きを見て「これからは防衛産業が発展しそう」などと考え、「防衛産業が発展すれば三菱重工業の売上があがるはず。業績がよくなって株価もあがるはずだ」と判断して資金を投入します。この場合は三菱重工業という企業の将来に投資をしているのです。
また「オルカン」という名前で有名な投資信託がありますが、これは全世界の株式に投資をするものです。全世界の株式に投資をするものなので、これに資金を投じるということは、将来的に世界経済は成長すると判断していることになるのです。
このように投資という行為は企業や国、世界の成長に対して資金を投じる行為です。
参加者に対して資源が無駄なく分配され、ある参加者がこれ以上の資源を得ようとする場合は他の参加者の資源を奪わなければならない状態を「パレート最適」と言いますが、投資の場合は他人の資源を奪う必要はありません。なぜなら中長期で見た時に企業などは成長するため、資源そのものの数量が増えるからです。パレート最適の状態では誰かが利益を上げれば他の誰かが損をしてしまうものですが、投資の場合は分配する資源が増えるのでそのような事態が起こる可能性は低いです。よって投資はギャンブル性の高いものというのは間違っています。
2. 投資は資金が減るもの
投資をすると資金が減る可能性があるというのは事実です。しかしこれも短期で見た場合が多く、長期で見た場合はその長さに応じて投資した額よりも資金が減るといった損をする可能性は低くなります。
まずここで言う「損」とは何かということからスタートしますが、「損」とは大体の場合「評価損」のことです。例えば昨日1,500円で買った株が今日には1,400円になっていた。この場合は100円の「評価損」が発生したことになります。
しかしここで気を付けてもらいたいことは、「評価損=資金が減る」ということではないことです。
昨日1,500円で買った株が今日1,400円に下がっていた。この時点で株を売ってしまうと、100円の損が「確定」してしまいます。この場合は100円分資金が減ります。
しかし今日1,400円に株価が下がったところで株を売らずにそのままにしておけば、100円の損は「確定」しません。100円の損はあくまで画面上のものであり、あなたの投資したお金はその時点では減っていないのです。
ここで言いたいことは、「買った株は売却しなければ資金が増えることも減ることもない」ということです。たとえ100万円の評価損が発生していたとしても、株を売らない限りそれはあくまで画面上のものにすぎません。株を売らずに待っていればそのうち株価が上昇して、今度は100万円の利益になることもあり得るわけです。
だからこそ、投資は直近の生活に支障の出ない余剰資金でやる必要があると言えます。余剰資金で投資をしている限り、評価損が発生してもそのまま保有を続けてプラスに転じることを待つことができるからです。無理に利益損失を確定させる必要がなくなるのです。
ちなみに筆者もソシオネクストという株で250万円の評価損を出したことがあります。しかしその企業の株を売らずに保有し続けたおかげで、半年後くらいに500万円の評価益となりました。そこで株を売却、利益を確定させて500万円資金が増えました。
さて株価というのは100%企業の業績で決まるものではありません。金利やニュースによって上下するものです。何なら毎日の取引では、特に何も株価に影響を与えるものがないにも関わらず株価が上がったり下がったりしています。株価は常に変動するもののため、短期・中期で見た場合は一時的に損をすることがあります。
しかし長期的に見た場合は損をする確率は減っていくことが多いです。これは企業の場合はその企業が成長を続けるものという前提に立っているため確実性には乏しいことですが、全世界や米国の株全体に投資をするような商品(投資信託)では過去のデータでは必ず得をしています。


これらの表は米国のダウ平均株価と、世界株式に投資した場合の指数に関するものですが、いずれの場合も短期的には株価が上下していますが、長期投資ではプラスに転じています。あくまで過去のデータにすぎませんが、世界経済や企業の成長が続く限りは長期的には今後も株価は上がっていくものと思われます。
3. 投資は破産の可能性があるもの
これを危惧する方も多いと思います。しかしこれについてはあなたが下手なことをしなければ滅多に起こることではありません。
投資で破産する場合は2点考えられます。
① 身の丈以上の資金を投資して損失を確定しなければならない場合
生活費を削ってまで投資にのめりこんだ結果、評価損を出してしまった。あるいは投資していた会社が倒産してしまった。こういったことは起こりえます。このような事態になった場合は生活費を手元に置いておかなかったために生活に苦しみ破産するというシナリオが考えられます。
対策としては繰り返しになりますが、投資はあくまで生活に影響の出ない範囲で余剰資金でやることです。例えば半年分の生活費を確保しておき、残りの資金を投資運用に回せば、たとえ評価損を出したとしても即座に損失を確定させて資金を減らす必要はなくなりますし、最悪投資先が倒産してもあなたまで破産することはなくなります。
② 信用取引やFXなどでレバレッジをかけて損をした場合
レバレッジとは「てこ」のことです。信用取引やFX(外国為替証拠金取引)と呼ばれる取引では、証券会社に保証金を預けることで自身の保有する資金の数倍、FXなら保証金の25倍までの資金で取引を行うことができます。
信用取引やFXは利益を得られればその利益は通常の数倍になるため大きいのですが、逆に損失も数倍となって破産する可能性が出てきます。特に一定の評価損が出た場合は追証と言って追加の保証金を証券会社に支払わなければならないため、強制的に損失を確定させられることにもつながります。これによって破産するという可能性は高いです。
対策としてはそもそも信用取引やFXをやらないこと。これらは短期取引なのでギャンブル性の強いものでもあります。私が掲げている安定した資産運用の目的にもそぐわないものなので、レバレッジをかけた取引は決してやらないことをおすすめします。
以上の3点が「投資が怖い」と思われている主な原因でしょう。しかしここまで述べたように、正しい知識を身に着けて長期で投資をすれば怖いことはありません。
株式投資の場合、安定した資産運用のコツは3つあります。
それは
① 分散
② 長期
③ 手数料
です。
銘柄を分散して保有し、できれば購入時期も分散し、長期で保有する。その間にかかる口座管理手数料や売買手数料、投資信託運用手数料は安いものを選ぶ。これが安定投資の鉄則です。
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