半村良「戦国自衛隊」
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ある日、自衛隊の一個小隊は突如として戦国時代にトリップした。日米大規模軍事演習の最中の出来事であった。伊庭義明三尉を中心とした小隊がいたのは、新潟県=越後であった。ここで出会った長尾景虎こそ、後の上杉謙信であった。自衛隊に激しい興味と親近感を表現した長尾景虎に、伊庭たちは運命を預けた。戦車、軍用トラック、ヘリコプター、哨戒艇、レーダー付大砲などを備えた自衛隊軍は、武田信玄をも含む、あらゆる敵を薙ぎ倒す連戦連勝。越後の一部将に過ぎなかった長尾景虎は、その援護によって越後守護職と関東管領を朝廷から任じられる。戦国時代に馴染んだ伊庭たちは天下統一を目指す。
最初から負け戦はわかっていたはずである。この物語は、タイムスリップが、いつの間にか現代に逆戻りするような生優しい話しではない。戦国時代に降りたてば、いずれは燃料のガソリンや弾薬は尽きる。いかに自衛隊員といえども、石油からガソリンや軽油を精製する専門知識まではないからである。弾薬だって工場が無ければ、いつかは無くなってしまう。自衛隊員たちの知っていた歴史と、伊庭たちが存在する戦国時代は微妙に違っていた。織田信長も、豊臣秀吉も、徳川家康も、斎藤道三もいない。しかし遂に訪れたカタストロフィで、伊庭は歴史とは何であるかを知ることになる。荒唐無稽なようでいて、時の真理は永遠である。