末廣圭「夢うつつ」
末廣圭「夢うつつ」。電子復刻第79弾。官能ロマン小説なので、今日のお話しは、女性の方々は読まなくて結構。今回は短編4本立て。いずれも女性が主人公。いつもはヤオイ系の印象だったが、今回はなかなか読ませる内容。特殊な職業や立場にある女性たちの心の機微を描く。特に作者自身の境遇でもある、官能小説家の描写はリアルで読み応えがあった。
①泡思い
ソープランドで働く真弓は、4年間で8000人もの男性客と接してきた。プロの鉄則として、濡れたりはしない。しかし34歳のサラリーマン田中雄一は、マッサージしてくれたり、幕の内弁当を買ってきてくれたりして、行為に及ばないで帰ってゆく。真弓は自らが30歳の宮元倫子であることを、初めて雄一に明かす。
②夢想の歓喜
奈良県出身の東尾庸子は時代小説作家を目指すが、中堅出版社編集者の磯辺博の勧めで、官能小説作家として24歳で「素肌の風」でデビュー。それから12年で36歳。文学賞を取れない力仕事である官能小説家として、締切に追われるが、だんだん着想に枯渇する。締切前夜にワインで酩酊しつつ、、結婚後半年の元彼にホテルに呼び出されて、親指を舐られた記憶が蘇る。
③錯綜の交わり
早乙女久美42歳。実業家の早乙女正章55歳とは結婚12年。バスト88を誇る美しい身体も、正章が50歳を迎えてから別ベッド。夫婦の豪邸に上原由紀・22 歳が家事手伝いとして住み込みで働きはじめた。眼が覚めた夜、夫と由紀が交わっているのを目撃した久美は、満たされない身体と心を、25歳の庭師である加納宏に思いを寄せる。
④夢うつつ
清水聡美は27歳の時に、4つ上の杉並北署の石橋久雄と結婚した。聡美は警視庁捜査一課で女性刑事を目指していた。そんな久雄に、結婚一年半にして「君は名器だ」と告げられる。保坂誠一29歳は、銀行員の婚約者である三井靖子・27歳をアイスピックで刺す事件で拘束されたが、黙秘して動機を語らない。誠一から「靖子の気持ちを訊いて欲しい」と頼まれた聡美は、靖子のマンションへ。現れた靖子は絶世の美女だったが、その実態はレスビアンだった。
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