見出し画像

佐藤優+鈴木宗男「最後の停戦論 ウクライナとロシアを躍らせた黒幕の正体」

佐藤優+鈴木宗男「最後の停戦論 ウクライナとロシアを躍らせた黒幕の正体」(徳間書店)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CD2L4WLN/
 ロシア通である鈴木宗男議員と佐藤優氏の対談集。ロシアのウクライナ侵攻の原因について二人は、ウクライナ側がミンスク合意を破って攻撃型ドローン機を親ロシア地域に飛ばした非を唱えている。また巷を流れるニュースの大半が西側諸国、特に米英メディアによるフィルターがかかっていると分析する。ウクライナの善戦や勝利や、露軍の残虐行為ばかり流している。それに対してロシアの報道は、自国民に危機感を持たせるために、露軍敗退も含めた真実を報道している。米英は戦争の長期化によるロシアの衰退や分裂を助長しようと目論んでいるが、著者二人は「停戦こそ最優先課題である」と説く。戦争に巻き込まれる人は少しでも少ない方がいい。また戦争当事者であるロシアを説得するためには、ロシアの立場や感情を知り、そこに寄り添ってゆく重要性を強調する。事実、佐藤宗男議員はプーチン大統領の信頼を得て、これまでの対露外交に大きな役割を果たしてきた。二人は停戦を進める一方で、真の日本の国益とは何かを改めて考え直して欲しいと訴える。
 ここからは個人的感想だが、ウクライナ侵攻において情報操作がなされていることは現実だろう。何が本当の情報なのか、はかりかねる状況にある。そして二人が主張しているように、アメリカの軍需産業の思惑も絡んでいるかもしれない。ロシアやプーチン大統領の気持ちを理解することも大切だろう。停戦が一番であることは同感である。しかしウクライナではクリミアをはじめ、ジョージアやモルドバにもロシアは侵攻している。明らかに他国領土を侵し、プーチン大統領が核兵器の使用をチラつかせている点は許容できない。そこは正した上での、停戦論でありたい。今は誰も出口が見えない。沖縄は太平洋戦争後にアメリカに占領されたが返還された。朝鮮や満州は第二次世界大戦後にはロシアに占領されていたが返還された。時間はかかっても長期的視野に則って、停戦後の事態を改善するという本書の示す手法はベストではないかもしれないが、ベターではあるかもしれない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?