歌舞伎町発「ホスト万葉集」
「ホスト万葉集」(発行〜短歌研究社、発売〜講談社)を読んでみた。作者は手塚マキと歌舞伎町ホスト75人作、編者は俵万智・野口あや子・小佐野弾である。歌舞伎町で働くホストたちが詠んだ900首の歌から300首に絞り込んで掲載した本である。
この企画を取りまとめた手塚マキ氏は、元No. 1ホストで、その後にホストクラブを経営するだけではなく、歌舞伎町商店街振興組合理事を務めたり、ボランティア団体「夜鳥の界」を立ち上げてホストによる街の清掃活動をしたり、セレクト書店「歌舞伎町ブックセンター」を立ち上げ。自らが世話になった歌舞伎町を愛して、大活躍している。編集の3人は、いずれも有名な歌人。ホストを光源氏を元祖チャラ男と見立てて、女性をかき口説く世界に働くホストたちの、社交上の嗜みとしたいということで始まった。元々LINEで短いメッセージをお客とやりとりする彼らは、ショートメッセージを作る能力に長けていると言う。
正直言ってそんなに上手い短歌ばかりではない。それでも男性が踏み込むことの少ないホストクラブの情景や、ホストの心持ちはよく伝わってくる。やたらと出て来るワードがシャンパン。これを入れてもらえることがホストの甲斐性と見做される。そして恋愛とビジネスの間を行きつ戻りつする気持ち。ホストによる接客行為が疑似恋愛だからだろう。もう一つが先輩後輩の成績の抜きつ抜かれつ。面倒みるみないとか、数字次第なのは体育会系の世界。そして忍び寄るコロナ禍による営業自粛のホストたちへの打撃。夜の裏側の世界の本音を覗いた気になれる一冊。
https://honto.jp/netstore/pd-book_30385779.html