『宮崎の秘境で育つキャビア~神話の里のスペシャリテ~』にまつわるストーリー
神々が住まう地とされる高千穂のなかでも「旅館 神仙」はひときわ神秘的な雰囲気のお宿。四季折々の風情を醸す日本庭園を抜けた先、情趣に富む個室料亭にて供される先付けが、地元近郊で育てられたチョウザメのキャビアです。その商品化までの道のりにも、神話のように運命を感じる出会いの物語がありました。
高千穂の風が吹き抜ける、風光明媚な空間で味わう
天孫降臨や天岩戸隠れの舞台としての伝承が残り、神話の里とも言われている宮崎県高千穂。雄大な山々に抱かれる町の中心部、神殿通りから少し奥まった閑静な坂道に佇むのが「旅館 神仙」です。室内総檜風呂や専用露天風呂などを備えた全8室の本館をはじめ、プライベートの庭園まで付いた離れ「神呂木の庄」の5棟、鬼八塚という神話史跡を整備した400坪の新エリア「別邸 神庭」の2室、それぞれに和洋折衷の多彩な空間が広がります。
和モダンのエッセンスが光る草庵「桔梗」、日本庭園を望む神庭「椿」など、14室もの個室料亭も完備。そこで供される京風懐石料理の先付け、スペシャリテとして位置づけられるのが「神仙キャビア」です。「お客さまの味覚が最も敏感なタイミングでお召し上がりいただきたく、食前酒とともに提供しております」と話すのは2代目女将の佐藤久美さん。ソムリエ資格を持った食通でもある女将とともに、今回はキャビアの生産地に向かいました。
秘境の美しい自然こそが、ピュアな味わいの源泉
東京23区にも劣らないほどの広大な面積ながら、人口は約2500人。およそ96%が森林であり、日本三大秘境のひとつにも数えられる椎葉村。標高600mほど、五月雨の降りしきる霧深い山間に突如として現れたのがチョウザメの養殖所です。
「自然の摂理そのままに清流をかけ流し、水温の変化が激しい環境で育てています」と教えてくれたのは鈴木宏明さん(写真左)。地元建設会社「鈴木組」の跡継ぎとして、新規事業開発部長を務めながら、チョウザメの養殖を営んでいます。「一定の温かい水温で育てたほうがチョウザメの成長は早く、孵化から6年ほどでキャビアを採取できますが、ここでの飼育期間は8年ほど。一度お腹に蓄えられた魚卵をあえて放置することで、それが崩れて母体の栄養に変わり、より大粒で品質の高いキャビアが育まれます。」とも。
2代目女将の佐藤久美さん(写真右)も、あいにくの雨ながらが「鈴木さんの話は、いつ聞いてもおもしろいです」とにっこり。
「今から4年前、長年の努力が実ってキャビアの採取に成功した、まさに丁度良いタイミングでご紹介いただいたのが『旅館 神仙』でした。敷地に足を踏み入れた瞬間、これまで京都の観光写真でしか見たことがなかった見事な枯山水の庭園が眼前に広がっていたんです」。その幽玄さに驚き、圧倒されながらも、鈴木さんはキャビア作りへの熱い想いを語り尽くしたと言います。
当時、はじめて鈴木さんのキャビアを口にした女将も、その味わいに驚嘆。「旨みが強く、コクが深く、それでいて雑味は一切ありませんでした! 今まで食べてきた外国産のキャビアが塩辛く、生臭いものに感じてしまうほど。これは神仙らしい形でお客さまにもお楽しみいただかなくては」と、オリジナルの商品開発に乗り出すことになったそうです。
試行錯誤のなか、柚子や山椒と合わせるアイディアなども出ましたが「フレッシュな味わいを最大限に活かすなら、そのままが最も贅沢」という結論に至った女将と鈴木さん。極限まで品質を高める方向に舵を切りました。
直径3.5mm、極めて大粒のブラックダイヤモンド
黒いダイヤとも言われるキャビアは、世界的に卵径の大きさで等級が分かれおり、3.2mm以上が最大級とされます。しかし、なんと「神仙キャビア」は3.5mm以上。特別な飼育法で通常より大きく育つ鈴木さんのキャビアのなかでも、10匹に1匹ほどしか、ここまでのサイズには到達しません。さらに母体の餌は、臭みの原因となる動物性タンパク質を極力減らすため、大豆主体のものを飼料メーカーと共同開発。抗酸化作用のあるワインの絞りかすなども活用してきました。そうして8年かけて大切に育て上げたキャビアが、チョウザメの体内で過熟する寸前、最も味わいが高まる瞬間を見極めて採集。離水防止を施し、マイナス60度で急速冷凍しています。
口当たりは熟れた果実のようにクリーミィ。輸入キャビアの塩分濃度が7〜15%なのに対し、「神仙キャビア」の塩分相当量は3%であり、素材本来の上質でピュアな濃厚さを堪能できます。「旅館 神仙」の先付けでは、料理長特製の手作りパンと味わえるほか、宮崎県の幸とセットで1瓶丸ごと味わえる特別なキャビアプランも用意。都城市在来種の大豆を使用したロシア風パンケーキ「ブリニ」と、川南町産の上質な生乳で作られた「真実のバター <無塩>」による極上のハーモニーもお楽しみいただけます。
はじめて鈴木さんのキャビアを食べた際の感動を「より多くのお客さまと共有させていただきたい」と商品監修を続けてきた女将。「ここまで品質の高いキャビアを使わせていただけることが本当に光栄です」と、感謝の言葉を口にしていました。そんな女将の“おもてなしの心”と、生産者である鈴木さんの“たゆまぬ創意工夫”の結晶である「神仙キャビア」。多くのお客さまが感嘆の声を上げ、なかにはケースごと購入される方もいらっしゃるそうです。旅館を代表する魅力のひとつにもなっているこちらの商品。大変光栄なことに、旅色の宿マルシェからお取り寄せが可能になりました。
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