生い立ち~幼少期~
あたしは三人姉妹の末っ子として生まれた。
姉二人は年子、そして4歳離れてあたし。
父は高校の教師で母は保育士として働いていたが、結婚と同時に仕事をやめ専業主婦になった。
家族は父と母、姉たちと祖父、祖母の7人。
今では珍しくなったのだろうか、大家族だった。
母は父と小学校からの同級生で隣の村からお嫁にきた。
由緒ある家柄の分家の「お嬢さま」としてそだった母は、嫁として立派につとめないといけないという思いから必死だったのだろう、とても厳しい人だった。
おまけに父と母の結婚は家柄の差からなのか反対されたという。
それでも押し切って結婚をしたものだから母としては絶対に良い嫁でないといけなかったのだとおもう。
祖父の顔色をうかがいとにかく静かにしていて欲しかった母は、姉たちがけんかをするとそのどちらかを、あたしが大泣きするとあたしを、2階にある``くらいとこ、、に何時間もとじこめた。
いつもけわしい顔をしている母の機嫌をみながら、あたしはいつしか泣かない子どもになっていた。
いい子にしないと怒られる。
泣いたら閉じ込められる。
``くらいとこ、、
そう。
目を開けているのかもわからないかび臭いあの蔵のような土壁の部屋。
重い扉で子どもの力では到底あけられることなんてできないあの暗闇へ。
``くらいとこ、、は本当にあたしを地獄へと堕とした。
夜蝶観音