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GPT4o映画シナリオ分析: 手に入れさせて全て奪え!エブエブにおける鮮やかな「破滅」

エブエブはなぜ愛されるのか?脚本から考えてみた

複雑なテーマだからこそ、構造がしっかりした脚本(*壮大にネタバレします!)

『Everything Everywhere All At Once』は、複雑なSFテーマをコメディと令和的なな家族愛のストーリーで巧みに消化しやすくした作品です。この映画は、多次元の世界を舞台にした壮大な物語を描きながらも、観客に親しみやすいキャラクターと感動的な瞬間を提供します。

特に、ジョブ・トゥパキのカートゥーンのような無茶苦茶な戦い方をする演出は『ワンピース』のニカの戦い方にも影響を与えたのではないかと個人的には考えています。(こちらの動画)

一方で脚本は基本に忠実であり、そのため分析が非常にしやすいものでした。

*今回はせっかくGPT4oが出たのでそちらを使ってみました

シナリオ13フェーズ分析:

ではここでシナリオを段階に分けて分析します。

背景

エブリン・ワンは、夫ウェイモンドと共に家族経営のランドリーを営む中年女性です。彼女は日常生活に追われ、税務調査の準備や家族の問題で心身共に疲弊しています。特に娘ジョイとの関係がぎくしゃくしており、夫とのコミュニケーションも不調です。ある日、税務調査のためにIRSに出向くと、突然別の次元のウェイモンドから接触を受け、マルチバース(多元宇宙)の危機に巻き込まれることになります。

1. 日常

エブリンの日常生活は、朝から晩までランドリーで働き、顧客対応や機械のメンテナンス、経理作業などに追われています。家族との食事の時間も短く、特に娘ジョイとの関係が緊張しており、ジョイは母親からの理解を求めつつも反発することが多いです。エブリンはまた、父親(ゴン・ゴン)に対しても孝行のプレッシャーを感じています。

2. 事件

IRSのオフィスで、突然別の次元から来たウェイモンドがエブリンに接触し、彼女にマルチバースの危機を説明します。彼女は、全ての次元が崩壊の危機に瀕しており、それを防ぐためには特定の能力を発揮する必要があると知らされます。エブリンは、異なる次元の自分とリンクし、彼らのスキルや知識を引き継ぐ能力を持つことが明らかになります。

3. 決意

エブリンは、マルチバースを守り、家族を救うために戦うことを決意します。彼女は次元間の跳躍を繰り返し、様々な自分と接触しながら、自分の潜在能力を最大限に引き出す方法を学びます。この過程で、彼女は次元ごとに異なるスキルや特技を習得し、それらを統合して戦いに活かします。

4. 苦境

エブリンは、自分自身や家族に対する疑念や不安に直面し、戦いの中で心理的にも追い詰められます。彼女は、次元間の移動や異なる自分との対話を通じて、現実と非現実の狭間で混乱し、時には絶望に打ちひしがれます。また、強力な敵であるジョブ・トゥパキとの対峙において、自分の限界を感じ、打ちのめされることもあります。

5. 助け

エブリンは、様々な次元からの自分自身や、元の次元の夫ウェイモンド、そして新たに仲間となるキャラクターたちの助けを借りて戦い続けます。特にウェイモンドの支えと愛情は、彼女にとって大きな力となります。また、彼女の家族や友人も次第に協力的になり、エブリンを助けるために奮闘します。

6. 成長・工夫

エブリンは戦いを通じて、自分自身の強さや家族の絆について新たな理解を深めます。彼女は異なる次元のスキルを活用し、創意工夫を凝らして敵に立ち向かいます。例えば、武道や料理の技術、芸術的な才能など、次元ごとに異なる特技を駆使して戦況を有利に進めます。

7. 転換

エブリンは、最終的に自分が持つ全ての可能性を統合し、一つの強力な存在としてマルチバースの崩壊を防ぐための鍵を見つけ出します。彼女は、自分の内面的な力と愛情を最大限に活かし、敵に立ち向かう新たな戦略を見つけます。

8. 試練

エブリンは最終決戦で、自分自身と家族の運命をかけて戦います。全ての次元を救うために、彼女は持てる全ての力を発揮しなければなりません。特に、ジョブ・トゥパキとの対決では、エブリンの精神力と感情が試されます。

9. 破滅

最終的な戦いでエブリンは絶望的な状況に陥り、全てを失う危機に直面します。ジョブ・トゥパキの圧倒的な力に対して劣勢に立たされ、彼女は一度は諦めかけます。しかし、彼女の家族や仲間たちの支えによって再び立ち上がることができます。

10. 契機

エブリンは自分自身の内面的な強さと愛情を再確認し、最終的な勝利への道を見つけ出します。彼女は家族と再び結びつき、マルチバースの安定を取り戻すための決定的な行動を起こします。家族の絆と愛情が、彼女の戦いの最大の武器となります。

11. 対決

エブリンは最終的な敵との決戦に挑みます。彼女は全ての力を結集し、家族の絆と愛情を武器にして戦い抜きます。感動的なクライマックスでは、エブリンが自身の力と愛を最大限に発揮し、マルチバースを救うための決定的な行動を取ります。

12. 排除

エブリンは最終的な敵を打ち倒し、マルチバースの崩壊を防ぐことに成功します。彼女は自分自身と家族を守り、平和を取り戻します。敵を排除するだけでなく、エブリンは家族との関係を再構築し、新たな絆を築くことができるようになります。

13. 満足

エブリンと家族は、再び一緒に幸せに暮らすことができるようになります。彼女は次元間の冒険を通じて得た知識と経験を生かし、新たな生活を築いていきます。映画は、家族の絆や個人の成長、そして多元宇宙の探求をテーマにしており、観客に深い感動と考察を促すメッセージを伝えています。

解説:

『Everything Everywhere All At Once』の脚本について、以下の3点が特に秀逸だと考えられます。

  1. 主人公の内面的成長と家族の再生を描く

    • エブリンは、異なる次元の自分自身との出会いや、様々な挑戦を通じて自分の内面と向き合います。家族との絆を再生し、彼女の成長が物語の中心となっています。

  2. 複雑なストーリーテリングと視覚的表現

    • マルチバースという概念を巧みに取り入れ、視覚的に魅力的なシーンが展開されます。異なる次元のエブリンが持つスキルや知識を利用することで、物語に深みと多層性が加わっています。

  3. 社会的テーマを個人の物語に反映

    • 家族の絆や個人の成長といった普遍的なテーマを、マルチバースの冒険を通じて描いています。エブリンの物語は、観客にとって身近で共感しやすい形で社会的メッセージを伝えています

6.成長で得たもの全てを失う、鮮やかな「9.破滅」

シナリオの読み方の一つは、その6.成長(主人公が絶好調なとき)と9.破滅をまずおさえることです。
何を得て、何を失うのかは伝えたいテーマに直結する非常に重要な部分です。

今回の場合は「全てにおいて最悪の決断をしてきた」現在の世界線のエブリンがあらゆる世界線の自分と繋がり、なんとなくの無双感が出てくるのが6.成長です。

具体的に何を得たのか、GPTに聞いてみました

マルチバースの能力:
エブリンは異なる次元の自分自身とリンクし、様々なスキルや知識を得ています。これにより、戦闘技術、料理のスキル、芸術的才能など、多くの特技を駆使できるようになります。
自信:
エブリンは、これまでの人生で感じていた無力感や不安を乗り越え、次元間を移動する中で自分の力を最大限に発揮できるようになります。彼女は自身の強さと可能性を信じるようになります。
家族との絆:
マルチバースの冒険を通じて、エブリンは家族との関係を再構築します。夫ウェイモンドや娘ジョイ、父親ゴン・ゴンとの絆が深まり、家族の大切さを再認識します。
新たな視点と理解:
異なる次元の自分との出会いや体験を通じて、エブリンは多様な視点を持つようになります。これにより、彼女は人生や世界の見方が広がり、他者への理解も深まります。
仲間や支援者:
エブリンは、異なる次元からの自分自身だけでなく、現実世界の仲間や新たに出会うキャラクターたちの助けも得ます。彼らの支援により、エブリンは困難な状況に立ち向かう力を得ます。
目的意識:
マルチバースの崩壊を防ぐという使命感が、エブリンに強い目的意識を与えます。この目的意識が、彼女を奮い立たせ、全力で問題に立ち向かう原動力となります。

家族との絆が本格的に復活するのは破滅の後ですが、中盤の6.成長フェーズでもこのような兆しが見えています。

夫ウェイモンドとの協力:
中盤で、エブリンはウェイモンドのサポートを受けながら、マルチバースの危機に立ち向かいます。彼女は、ウェイモンドが次元間の移動をサポートし、自分を守ろうとする姿勢に感謝し始めます。この協力は、彼らの絆を少しずつ修復し始めるきっかけとなります。
娘ジョイとの関係:
エブリンが異なる次元の自分とリンクする過程で、ジョイとの関係にも変化が現れます。特に、ジョブ・トゥパキ(ジョイの多元宇宙バージョン)との対峙を通じて、エブリンはジョイの内面の葛藤や苦しみを理解しようとします。これは、母娘関係の修復の端緒となります。
父親ゴン・ゴンとの対話:
エブリンは、父親ゴン・ゴンとの関係も見直し始めます。ゴン・ゴンの期待に応えようとするプレッシャーと向き合う中で、エブリンは彼との対話を重ね、過去の誤解を解消しようとします。これもまた、家族の絆を再構築する一歩となります。

エブリンが全てを失う瞬間は、物語の中で最も絶望的な状況に陥る場面です。クライマックスの手前でどんな物語でも非常に重要ですが、この映画ではあらゆる次元でもう徹底的に全てを失います(笑)

  1. ジョブ・トゥパキの攻撃

    • ジョブ・トゥパキ(エブリンの娘ジョイの多元宇宙バージョン)は、次元間の混沌を引き起こす主要な敵です。彼女はエブリンに対して圧倒的な力を持ち、エブリンの意識と精神を攻撃します。これにより、エブリンは自分の存在や行動に対する自信を失い始めます。

  2. 家族の崩壊

    • ジョブ・トゥパキとの対決の中で、エブリンは自分の家族との関係がさらに悪化することを経験します。ジョイは母親の行動に反発し、ウェイモンドはエブリンの変わりように困惑し、父親ゴン・ゴンもエブリンを理解しようとしません。このため、エブリンは精神的に孤立し、家族との絆が一時的に完全に断たれます。

  3. 次元の崩壊

    • ジョブ・トゥパキの影響で、複数の次元が同時に崩壊の危機に瀕します。エブリンは次元間の移動を試みる中で、次々と破壊される世界を目の当たりにし、絶望感を募らせます。彼女は、自分の努力が全く無意味であるかのように感じ、無力さに打ちひしがれます。

  4. 個人的な絶望

    • エブリンは、すべての次元で失敗し、どの世界でも成功できない自分に対する深い絶望を感じます。彼女は、これまでの人生や行動が全て間違いであったかのように感じ、自分が存在する意味や価値を見失います。この内面的な崩壊は、彼女が全てを失ったと感じる最大の理由です。

  5. 自己犠牲の試み

    • 絶望の中で、エブリンは自らの犠牲を通じてマルチバースを救おうとします。しかし、彼女の努力は一時的には無駄に思え、周囲からの助けも得られない状態が続きます。彼女は、自分一人ではこの危機を乗り越えられないことに気付きます。

見ていてわかりやすく一つ一つの大事なものが失われていく様子がわかります。

あらゆる次元のあらゆる関係性において絶望を感じるのですが(これが既に徹底的な破滅)、全ては娘のジョイという存在の大切さに収束させています。

そして、全て収束されたジョイを失わせてはじめて、完全な破滅というわけです。

破滅後の再起

そして、当然再起(10.契機)はジョイとの和解から始まります。これがオセロゲームのようにすべてを一気にひっくり返していく。

エブリンがこの絶望的な状況から再び立ち上がるきっかけは、彼女の家族や仲間たちの支えによるものです。特に、ウェイモンドの愛情やジョイとの絆が再び強くなることで、エブリンは自分の内面に眠る強さを取り戻し、最終的にはマルチバースを救うための決定的な行動を取ることができるようになります。

個人的に好きなのは複雑なテーマをコメディとちゃんと家族愛でまとめあげてるところなんですよね。だからこそこの破滅が映える。

この破滅から再起する過程は、エブリンの内面的な成長と家族の絆の再生を描く重要な要素であり、物語のクライマックスに向けての大きな転換点となっています。

類似作品:

『Everything Everywhere All At Once』と同様に、一度得るものを得て、絶好調にしてから破滅に叩き落とすシナリオは沢山ありますが、いくつか例示します。

インターステラー (Interstellar)

  • 得るもの: 主人公クーパーは、地球を救うためのミッションに成功する兆しを見せ、希望を取り戻します。

  • 失うもの: ブラックホールに飛び込み、絶望的な状況に直面し、家族との再会も果たせないかもしれないと感じます。

  • 再起: クーパーは、五次元空間でデータを送信し、人類を救う鍵を見つけ出します。最終的に娘と再会し、人類の希望を取り戻します。

グラディエーター (Gladiator)

  • 得るもの: マキシマスはグラディエーターとしての名声を築き、皇帝の信頼を取り戻しつつあります。

  • 失うもの: クライマックス直前、彼はコモドゥスに裏切られ、致命的な傷を負います。

  • 再起: マキシマスは最終決戦でコモドゥスを打ち倒し、ローマに正義をもたらすが、最後には自身も命を落とします。

ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 (The Lord of the Rings: The Return of the King)

  • 得るもの: フロドとサムは、ついにモルドールに到達し、指輪を破壊する寸前まで到達します。

  • 失うもの: クライマックス直前、フロドは指輪の誘惑に負け、ゴクリに指輪を奪われます。

  • 再起: ゴクリの介入で指輪は破壊され、フロドとサムはモルドールから救出されます。中つ国に平和が訪れます。

まとめ


映画の中で主人公を成長させ、破滅させ、そして再起させるプロセスは、物語のテーマを伝えるための主軸となります。

これらの要素を通じて、観客はキャラクターの内面的な変化と成長に共感し、物語のメッセージを深く理解することができます。(完全なコメディだと絶不調にして、持ち上げて、もう一度落とすという真逆のアプローチになりますが、この点は別の記事にて)

漫画のシナリオを作る際には、まずはこのあたりを徹底的に考えるところからはじめないとなと感じました!

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