GPT4o映画シナリオ分析: 手に入れさせて全て奪え!エブエブにおける鮮やかな「破滅」
エブエブはなぜ愛されるのか?脚本から考えてみた
複雑なテーマだからこそ、構造がしっかりした脚本(*壮大にネタバレします!)
『Everything Everywhere All At Once』は、複雑なSFテーマをコメディと令和的なな家族愛のストーリーで巧みに消化しやすくした作品です。この映画は、多次元の世界を舞台にした壮大な物語を描きながらも、観客に親しみやすいキャラクターと感動的な瞬間を提供します。
特に、ジョブ・トゥパキのカートゥーンのような無茶苦茶な戦い方をする演出は『ワンピース』のニカの戦い方にも影響を与えたのではないかと個人的には考えています。(こちらの動画)
一方で脚本は基本に忠実であり、そのため分析が非常にしやすいものでした。
*今回はせっかくGPT4oが出たのでそちらを使ってみました
シナリオ13フェーズ分析:
ではここでシナリオを段階に分けて分析します。
解説:
『Everything Everywhere All At Once』の脚本について、以下の3点が特に秀逸だと考えられます。
主人公の内面的成長と家族の再生を描く
エブリンは、異なる次元の自分自身との出会いや、様々な挑戦を通じて自分の内面と向き合います。家族との絆を再生し、彼女の成長が物語の中心となっています。
複雑なストーリーテリングと視覚的表現
マルチバースという概念を巧みに取り入れ、視覚的に魅力的なシーンが展開されます。異なる次元のエブリンが持つスキルや知識を利用することで、物語に深みと多層性が加わっています。
社会的テーマを個人の物語に反映
家族の絆や個人の成長といった普遍的なテーマを、マルチバースの冒険を通じて描いています。エブリンの物語は、観客にとって身近で共感しやすい形で社会的メッセージを伝えています
6.成長で得たもの全てを失う、鮮やかな「9.破滅」
シナリオの読み方の一つは、その6.成長(主人公が絶好調なとき)と9.破滅をまずおさえることです。
何を得て、何を失うのかは伝えたいテーマに直結する非常に重要な部分です。
今回の場合は「全てにおいて最悪の決断をしてきた」現在の世界線のエブリンがあらゆる世界線の自分と繋がり、なんとなくの無双感が出てくるのが6.成長です。
具体的に何を得たのか、GPTに聞いてみました
家族との絆が本格的に復活するのは破滅の後ですが、中盤の6.成長フェーズでもこのような兆しが見えています。
エブリンが全てを失う瞬間は、物語の中で最も絶望的な状況に陥る場面です。クライマックスの手前でどんな物語でも非常に重要ですが、この映画ではあらゆる次元でもう徹底的に全てを失います(笑)
ジョブ・トゥパキの攻撃
ジョブ・トゥパキ(エブリンの娘ジョイの多元宇宙バージョン)は、次元間の混沌を引き起こす主要な敵です。彼女はエブリンに対して圧倒的な力を持ち、エブリンの意識と精神を攻撃します。これにより、エブリンは自分の存在や行動に対する自信を失い始めます。
家族の崩壊
ジョブ・トゥパキとの対決の中で、エブリンは自分の家族との関係がさらに悪化することを経験します。ジョイは母親の行動に反発し、ウェイモンドはエブリンの変わりように困惑し、父親ゴン・ゴンもエブリンを理解しようとしません。このため、エブリンは精神的に孤立し、家族との絆が一時的に完全に断たれます。
次元の崩壊
ジョブ・トゥパキの影響で、複数の次元が同時に崩壊の危機に瀕します。エブリンは次元間の移動を試みる中で、次々と破壊される世界を目の当たりにし、絶望感を募らせます。彼女は、自分の努力が全く無意味であるかのように感じ、無力さに打ちひしがれます。
個人的な絶望
エブリンは、すべての次元で失敗し、どの世界でも成功できない自分に対する深い絶望を感じます。彼女は、これまでの人生や行動が全て間違いであったかのように感じ、自分が存在する意味や価値を見失います。この内面的な崩壊は、彼女が全てを失ったと感じる最大の理由です。
自己犠牲の試み
絶望の中で、エブリンは自らの犠牲を通じてマルチバースを救おうとします。しかし、彼女の努力は一時的には無駄に思え、周囲からの助けも得られない状態が続きます。彼女は、自分一人ではこの危機を乗り越えられないことに気付きます。
見ていてわかりやすく一つ一つの大事なものが失われていく様子がわかります。
あらゆる次元のあらゆる関係性において絶望を感じるのですが(これが既に徹底的な破滅)、全ては娘のジョイという存在の大切さに収束させています。
そして、全て収束されたジョイを失わせてはじめて、完全な破滅というわけです。
破滅後の再起
そして、当然再起(10.契機)はジョイとの和解から始まります。これがオセロゲームのようにすべてを一気にひっくり返していく。
エブリンがこの絶望的な状況から再び立ち上がるきっかけは、彼女の家族や仲間たちの支えによるものです。特に、ウェイモンドの愛情やジョイとの絆が再び強くなることで、エブリンは自分の内面に眠る強さを取り戻し、最終的にはマルチバースを救うための決定的な行動を取ることができるようになります。
個人的に好きなのは複雑なテーマをコメディとちゃんと家族愛でまとめあげてるところなんですよね。だからこそこの破滅が映える。
この破滅から再起する過程は、エブリンの内面的な成長と家族の絆の再生を描く重要な要素であり、物語のクライマックスに向けての大きな転換点となっています。
類似作品:
『Everything Everywhere All At Once』と同様に、一度得るものを得て、絶好調にしてから破滅に叩き落とすシナリオは沢山ありますが、いくつか例示します。
インターステラー (Interstellar)
得るもの: 主人公クーパーは、地球を救うためのミッションに成功する兆しを見せ、希望を取り戻します。
失うもの: ブラックホールに飛び込み、絶望的な状況に直面し、家族との再会も果たせないかもしれないと感じます。
再起: クーパーは、五次元空間でデータを送信し、人類を救う鍵を見つけ出します。最終的に娘と再会し、人類の希望を取り戻します。
グラディエーター (Gladiator)
得るもの: マキシマスはグラディエーターとしての名声を築き、皇帝の信頼を取り戻しつつあります。
失うもの: クライマックス直前、彼はコモドゥスに裏切られ、致命的な傷を負います。
再起: マキシマスは最終決戦でコモドゥスを打ち倒し、ローマに正義をもたらすが、最後には自身も命を落とします。
ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 (The Lord of the Rings: The Return of the King)
得るもの: フロドとサムは、ついにモルドールに到達し、指輪を破壊する寸前まで到達します。
失うもの: クライマックス直前、フロドは指輪の誘惑に負け、ゴクリに指輪を奪われます。
再起: ゴクリの介入で指輪は破壊され、フロドとサムはモルドールから救出されます。中つ国に平和が訪れます。
まとめ
映画の中で主人公を成長させ、破滅させ、そして再起させるプロセスは、物語のテーマを伝えるための主軸となります。
これらの要素を通じて、観客はキャラクターの内面的な変化と成長に共感し、物語のメッセージを深く理解することができます。(完全なコメディだと絶不調にして、持ち上げて、もう一度落とすという真逆のアプローチになりますが、この点は別の記事にて)
漫画のシナリオを作る際には、まずはこのあたりを徹底的に考えるところからはじめないとなと感じました!
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