セミナー「ノンアルコールドリンクの飲食業への進展と茶を考える」受講メモ
とき:2024年2月24日
ところ:ふじのくに茶の都ミュージアム
講師:安藤裕(あんどうゆう)
株式会社アルト・アルコ
著書
セミナーまとめ
・ノンアルコールドリンクの定義
アルコール度数が1.0%未満であり、お酒のような飲用シーンや満足感を提供することを目的としたドリンク。
・ノンアルコールドリンクの4類型
(1)発酵製法(KOMBUCHA、ジンジャービアなど)
(2)脱アルコール製法(ノンアルコールビール)
(3)インフュージョン製法(オルタナティブALC、shrbなど)
(4)その他の製法(ボトリングティー等)
・市場規模と背景
2028年のグローバル市場は約3兆円に達する見込み。
アルコール消費量は一貫して減少傾向にあり、日本の成人人口のうち月に1回も飲酒しない割合は55%に上る。2009年から2022年までのノンアル市場の平均成長率は17%。
・ ボトリングティーのSWOT分析
Strengths(強み):高付加価値の付与が可能、淹れる工程が不要- Weaknesses(弱み):味覚的な差別化が困難、酸味のなさ
Opportunities(機会):海外市場や海外顧客への展開、高付加価値ノンアルコール製品がまだ少ない
Threats(脅威):市場参入プレイヤーの不足、代替品の豊富さ
・ボトリングティーのペアリングにおける考察
欠点「酸味がない」
酸味の働き:食事の間に次の一口へと誘う役割を果たし、ワインとの類似性を提供。また、味わい全体の骨格を形成する重要な要素。
・ボトリングティーの可能性
第三者視点での新たな評価基準の策定(第三者にもわかりやすい基準)
ボトリングティー市場参入の促進(市場参加者が少なすぎる)
市場創造にむけて
評価基準策定
飲食店開拓
教育活動
・飲食店開拓の鍵
買いやすさ 飲食店商流への適合、適正価格、安定供給
使いやすさ 常温保管、抜栓後保管性、ペアリング
語りやすさ 原料茶葉、製法、ブランド
・試飲 スパークリング3種
深蒸し茶スパークリングティー(高柳製茶茶葉使用)
330ml 税込1,150円(Benefitea)
牧之原産の一番茶を丁寧に抽出。爽快な喉越しとうま味。
タイミング:食中 ペアリング:少し重めの肉料理
ROSE /スパークリングティーローズ
300ml 税込3,000円(The Tea Company)
和紅茶がベース。ダマスクローズと黒文字、ハーブをブレンド
タイミング:食前 ペアリング:燻製のポテトサラダ
NON SALTED RASPBERRY & CHAMOMILE
750ml 税込3,888円(アルト・アルコ)
ベリー系の香りを紅茶の香りが下支え。ジュースとアルコールの間のバランス。
タイミング:コース序盤 ペアリング:カプレーゼ、サーモン
まとめと感想
ノンアルコールドリンクにおいて、「酸味」はその骨格を成す重要な要素であり、これを基点に甘みやボディなどの味の構築が行われます。
この点で後発酵茶はノンアルコール飲料として重要な資質を備えていると言えます。緑茶は、高付加価値商品としての高い可能性を秘めている一方で、香味の差別化が課題となっています。特に、酸味に代わる骨格の構築が重要な課題であり、うま味、渋味、苦味のいずれかを強調し、全体のバランスをとる必要があります。一方、紅茶には、ROSEやNONのような素材としての活用可能性があります。緑茶も、焙煎香や品種香などの香りをアクセントとして、また、タンニンやうま味、粘度をボディ感として素材活用する方法も考えられます。
飲食店での普及にあたっては、「語りやすさ」が先行していますが、「買いやすさ」や「使いやすさ」の向上も課題です。普及を図るにあたり、常温での保管可能性とペアリングの提案は重要な要素であると考えられます。これはノンアル飲料の市場規模がまだ小さく、飲食店として優先度が低くなりがちなことに起因します。市場を活性化させるためには、市場参加者の増加が必要不可欠です。市場では高価格でうま味が際立つボトルリングティーが注目を集めていますが、ノンアルコール飲料としての文脈を考えた時、異なるアプローチを模索する必要性があると感じました。
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