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なぜ働いていると本が読めなくなるのか

なぜ働いていると本が読めなくなるのか。

ワーカホリックと呼ばれるような新鋭起業家や、毎日資格試験の勉強に邁進している学生。身近にいる忙しく働いているな、と感じる人で書籍を堪能している人は実体験においても確かに少ない。

自己啓発書をはじめとする自己研鑽系の書籍や、喫緊の課題を処理するためのハウツー本を手に取る人は多いが、ゆっくりと書籍を味わっている人が減ってきているのを感じる。僕もそのうちの一人だ。

僕自身大の読書家というわけではないが、図書館という場所が心地よく定期的に通うような子供だった。小中高では図書委員をやるくらい空間が好きだった。

大学受験の参考書探し(という名目の勉強をサボる時間)のために本屋に足繁く通うようになってから、大学在学中も学問書・小説・ビジネス書と幅広い書籍に触れてきたと思う。しかし、インターンをしたり研究が忙しくなってからというもの、どうしても本が手につかないのだ。

時間がないと感じつつも、Youtubeのshort動画やX(Twitter)には手が伸びる日々。どうにかせねば、という謎の焦燥感に苛まれながらも、頑張ってスキマ時間にビジネス書をかじりかじり読むくらいだった。

"時間がない中インプットの努力をしている感"に酔いしれながらも、何か違うと常に感じていた。将来の成功とか全部気にせず、自分の中の精神空間を広げていくためだけの読書の時間を増やしたい。2週間ノイズのない読書時間、のような期間を取れるビルゲイツのような勇気のある人間を羨ましく感じる。

書籍に戻ろう。

この書籍の主題のような、読書量の低下の原因としてよく挙げられる主張は大きく二つに帰着しがちである。

一つ目は、読書の時間が取れないのが良くない、のような個人の環境コントロール力がない、という指摘。

二つ目は、そもそも本の良さをわかっていない、人間には活字の良さがわかる人間とそうでないの人間の2種類がいる、のようなそもそもの人間の素質の話。

どちらも結局著者ができる側の人間、読者が欠損のある人間という構図になるパターンが多いと思うが、この点でこの書籍は珍しいのかもしれない。

しかし、この書籍は著者が"自分もできない"と弱さを曝け出し、あくまで現代の読書習慣は環境要因によるものが大きいのである、という主張から始める。

そして、その環境要因を点で捉えず線で捉えるために、明治時代の活版印刷が勃興する前夜まで遡って話がスタートする。

出版業界、そして民衆の読書スタイルがどのように移り変わっていくかのストーリーをかなり丹念な調査で紐解いていく様はいろんな発見があり、素直に面白かった。

著者の主張

著者がこの書籍で言いたかったことは、大きく二つである。

  1. 本って面白いよ!人生を豊かにしてくれるよ!

  2. 本が読める(人生に豊かさを付与する時間を作れる)くらいゆとりのある(働きすぎない)人生にしよう!

特に後半に進むにつれて、2番の主張、言い換えると"現代人は働きすぎである。働く時間を減らして有意義な時間を増やそう"という主張が色濃くなっていく。

ここの著者の根本主張に対しては、共感半分、懐疑半分であった。

僕個人の主張

というのも、結局著者が言いたいことは、"働くとか働かないとか関係なく、人生を豊かにする時間を増やしましょう"ということだからだ。

労働時間の多寡と直接の因果はない。
実際に著者もリクルートで働いていた時よりも、好きだった読書時間を確保し、その上で文章を執筆しているという現在の労働スタイルの方が幸福度が高いだけのはずだ。

というのも、労働時間はリクルートの時と変わっていないと著者自身が明言している。労働と認識していない仕事も含めると現在の方が一般的に言うワーカホリックなのではないか。

ただ、多くの人が(同じ給料という前提で)働く時間が短くなることにより、日々のQOLが向上することは理解できる。

具体的に趣味として何かしたい!という人でなくても、時間的な余裕があることは精神的なゆとりになりうる。

しかし、強調したいのは"労働時間を減らす"のは目的ではなくてきっかけであると言うこと。

その減らした時間で熱中できる何かを探してほしい。

僕自身も修士課程の学生として化学の研究を丸一日縛られている時は苦痛であった。しかし、今は(労働と捉えていなくても)仕事をしている時間は1.5倍以上になっている。それでも精神的にゆとりがあるのも、幸福度が高いのも圧倒的に今である。

最終的にありきたりの結論になって申し訳ないが、熱中できる仕事を見つけるのが一番あなたの幸福度は高いし、それが結局あなたが生きている価値を一番社会に還元できる。

その時々で熱中するものは変わってもいいし、最初はこれに熱中する!と決めて始めるもので良いと思う。

別に24時間働かなくても、1日3時間でも良いから熱中できるものを見つけよう。

これは僕が僕自身に伝えたいことでもあるし、結局著者が伝えたかったのも近いものがあるのではないかと思う。

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