読書「侮るな東京の山 新編奥多摩山岳救助隊日誌」 金 邦夫(著) 山と渓谷社 全国の山に通じる登山の安全を学ぶ本
1 この本との出会い
著者の記事が岳人(東京新聞)に連載されていた時、時々読んでいて、まとめて読みたいと思ったので、書店で購入しました。
山と渓谷さん、ライバルだった旧岳人の本までを含めて、山や自然の良かった絶版を、すこしずつ再販してくれています。いい本をもっと、もっと、再販して下さい!!!
2 奥多摩について少しだけ
奥多摩は、東京都の西の端、山梨県、埼玉県の県境に位置する山々の総称で、本書の帯に書かれているように、最高峰の雲取山(標高2000m越え)を含む真の山岳地帯です。
電車でのアクセスだと、JR青梅線を利用して山域入口の青梅駅まで、東京駅
から最短1時間15分、さらに青梅駅から山域の中央の奥多摩駅まで40分ほどです。奥多摩駅からは各山方面に向かうバスが本数が多くないもののあります。
青梅駅から奥多摩駅間の各駅は、春から秋にかけて週末の朝には山に向かう人であふれます。神奈川県の丹沢もそうですが、初心者でも登れるルートから経験が必要なルートまでたくさんあり、下山後に温泉と、ちょっとした食事が楽しめるので、当然こうなります。同じ東京の西の端にあり、人気が高い高尾山と比べたら、各ルートはきつく、歩くのに体力が必要です。
3 本書
著者の金さんは、奥多摩を管轄する青梅署の元お巡りさん。遭難が起こると救助する業務を長い間、担われていました。北アルプスや上信越の山に行くのに比べて、気楽に行ける奥多摩は、四季を通して多くの登山者が楽しむ半面、遭難・事故が、どうしても起こってしまいます。
本書では、遭難・事故の事例を、登山者の足取りの再現と、救助とその後の様子が一対で書かれています。
事例は、奥多摩に限らず、全国の山に通じるので、初心者は学びのため、ベテランは、これまでの活動を見直すために、東京近郊に住んでいない人でも読んでみてはどうでしょうか?
4 個人的な体験から本書の推薦
全国的に登山者は増えています。いい事です。ただ、自分の安全を自分で守る知識と、経験の積み上げは必要です。この本を、安全登山の学びに推薦します。こんなことを書くのは、私の体験に基づいています。
奥多摩は、私が一番よく歩いている(歩いてきた)山で、ホームグランドとも言えます。入山口で、時々、行方不明者情報提供の案内版を見ます。初心者が普通に歩けるルートでも、危険が潜でいると考えるべきです。
本書に書かれている一つの事例にたまたま遭遇しました。
登山道を下山していたら、救助隊がレスキュー装備を背負い登ってきて、滑落した人の救助に向かうと聞きました。邪魔にならないうように下山したら、登山口に救急車が止まっていて、しばらくすると、ヘリコプターが飛んできました。滑落した人は、登山道ですれ違った時に挨拶をしたグループの一人で、残念なことに収容された病院でなくなっています。
滑落したと思われる場所は、そこだけ、少しルートがわかりにくいですが、花でもおいていなければ、歩く人が気が付かないで通過するところです。
本書で紹介されているルートで、クマの親子に遭遇したこともあります。間一髪で襲われずに済みましたが、クマが去ったあと、しばらく、震えが止まりませんでした。
こんな、経験があるので、クマ鈴、簡易レスキューグッズ、ヘルメット、スマホのGPS、シュラフカバーなど、初心者向けルートと言えども、最近は着用、もしくは携行しています。装備をどこまで持つかは、ルートや天候で判断です。あと必ず早朝出発して、午後早くに下山できる計画にしています。
写真は、奥多摩で楽しんでいる巨樹めぐりの紹介。無理なく、安全の意識を持って歩けば、奥多摩は素晴らしい場所です。