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PPP的関心【地域企業のチャンス「スモールコンセッション」】

先日書いた「公共施設マネジメント」という記事はこのPPP的関心シリーズのなかでは比較的多くの方の目に触れた記事となっています。

他にも公園など公的不動産の扱いに関連した記事も同じ様な傾向にあることを考えると、新たな公共施設の整備や既存施設の維持・管理・運営のあり方というテーマは関心の高い話題だということでしょう。
そんな時にたまたま目にしたのが「スモールコンセッション」というワードが入った以下のリンクの記事です。
耳慣れない言葉だと思いましたが、コンセッション(公共施設等運営事業)は大きな箱物に使われることが多いという印象とは全く逆に、スモール+コンセッションという言葉は印象的でしたし、PFI事業またはもう少し広い意味で公民が連携して展開する事業は地域事業者の新たなビジネスチャンスだと日頃から考えている自分としても、この言葉や言葉に紐つく環境変化や考え方には注目すべきだと思います。


そもそもコンセッションって

公共施設維持、運営における「コンセッション( 公共施設等運営事業 )方式」は、平成23年のPFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)改正において導入さられた方式です。
この方式の概要は「利用料金の徴収を行う公共施設について、施設の所有権を公共主体が有したまま、施設の運営権を民間事業者に設定する方式」(内閣府HP)というものです。

内閣府HPより

このコンセッション方式を用いる対象施設はPFI法が対象とする施設ですから以下の第二条に示されたものが対象として当てはまります。

第二条 この法律において「公共施設等」とは、次に掲げる施設(設備を含む。)をいう。
 道路、鉄道、港湾、空港、河川、公園、水道、下水道、工業用水道等の公共施設
 庁舎、宿舎等の公用施設
 賃貸住宅及び教育文化施設、廃棄物処理施設、医療施設、社会福祉施設、更生保護施設、駐車場、地下街等の公益的施設
 情報通信施設、熱供給施設、新エネルギー施設、リサイクル施設(廃棄物処理施設を除く。)、観光施設及び研究施設
 船舶、航空機等の輸送施設及び人工衛星(これらの施設の運行に必要な施設を含む。)
 前各号に掲げる施設に準ずる施設として政令で定めるもの

PFI法 条文より抜粋

条文を見ると多様な施設に渡っていて幅広な可能性を感じるところですが、コンセッション方式が導入されて以降、実際にこの方式が用いられた施設は「空港」「道路」「上下水道」など「大型」の施設・インフラに限られてきました。

冒頭にも書いたように公共施設運営について関心の高まり、近い将来の問題としての費用不足や担い手不足にどう対処するのかを考えると、選考事例にあるような大型施設・インフラに限らず、もう少し幅広な施設の維持・運営に対象を広げ、従来方式、すなわち公共セクターで何とか運営し続けます、ということにこだわらずに可能性を広げてほしいところです。

コンセッション方式の活用推進は重点施策

実際にコンセッション方式の導入拡大については「PPP/PFI推進アクションプラン(令和3年改定版)(令和3年6月18日民間資金等活用事業推進会議決定)という「大きな方針」のなかも公共施設等運営事業(コンセッション事業)の活用 は「重点施策」と示されています。

 集中取組方針 (公共施設等運営事業等の重点分野)
〇各分野について、以下の数値目標に基づいた取組を推進
水道 (今後の経営のあり方の検討 30件 :~令和3年度)
下水道 (実施方針策定6件 :~令和3年度)
クルーズ船旅客ターミナル施設 (今後の動向等を見極めつつ、令和4年度以降の数値目標を改めて検討)
MICE施設 (6件 :~令和3年度)
公営水力発電 (今後の経営のあり方の検討 ※3件 :~令和4年度)・・・

PPP/PFI推進アクションプラン(令和3年改定版)概要版より 抜粋

ただし、気になるのは相変わらず目標に明示されている対象施設・インフラはどちらかといえば「大型」なものになっている点が気になります。

「スモールコンセッション」とは

そんな中での冒頭の記事です。記事は以下の書き出しで始まっています。

空港など大規模インフラを対象とするイメージが強いコンセッションだが、その活用分野が広がっている。人口10万人に満たない自治体が主導するコンセッション事業も増えてきた。例えば、北海道石狩市では今春、再生可能エネルギーによる地産地消の電力供給事業が始まる。滋賀県米原市や福岡県宮若市のように、既存の公共施設を再生し、地元企業が運営を担う事例も出てきた。地方発の「スモールコンセッション」で地域経済を持続的に発展させる試みが相次いでいる。

日経クロステック「福島隆則のインフラビジネストレンド」より

記事で紹介れている事例の特徴として興味深い点は
■コンセッション方式の重点分野にこだわらない
人口10万人に満たない自治体が主導
といういう点です。
先ほど紹介した「PPP/PFI推進アクションプラン(令和3年改定版)」では、それまで人口規模20万人以上の自治体に求められていたPFI導入の優先的検討規定の策定を、もう一段粒度を下げて人口10万人以上20万人未満の地方公共団体にも優先的検討規程の策定を求める(令和5年度まで)ことが示されています。

そうした背景の中で、新たな施設整備についてだけを視野に入れた優先検討ではなく、事例にある様な、例えば地域エネルギー供給など今後必要となる施設を整備した後の「維持管理・運営」委託といった導入検討は実現可能性も実施後の効果インパクトも大きいと思います。

地域事業者のビジネスチャンスと捉える

また記事で引用された事例で指摘されたもう一つの特徴が、「地元企業」の参画によって域内経済の活性化、域内経済循環の構造強化にもつながることです。これは全くその通りだと思いました。
以前の新・建設業の実践企業紹介として書いた記事でも述べましたが、地域の課題解決そして地域の未来創造に貢献することを「事業として」取り組む建設業、不動産業が増えると、街(そこにいる人)が元気になります。

特に、公民連携事業は民間にとって「(言葉は悪いですが)公的機関が独占してきた」機会開放であり新たなビジネスチャンスという側面があります。大企業が参入しにくい「スモール」な事業を組み立て地域企業の参入を促すことは勝機を自ら拡大させることにつながります。

行政にとっても「能率・効率・効果」を高めるチャンス

地域企業とともにスモールコンセッションを企画、実行することは行政機関にとっても公的サービス提供の能率、効率、効果を高めることにつながると思います。
スモールコンセッション方式の導入範囲をどこまで拡大するかを検討することは、言い換えれば、行政機関が「サービスプロバイダー(公的サービスを自ら提供する組織)か、プロバイダーマネジャー(公的サービスを提供する民間をマネジメントする役割を持つ組織)か、どちらになるか?を選ぶことでもあると思います。プロバイダーマネジメントに徹することは、他組織の力を借りる=投入を小さくして、優れた運営をしてもらう=成果を大きくすることであり、すなわち効率(生産性)アップに直結します。
「自分が今やっていることを、自分よりも能率・効率・効果を高めてくれる人にやってもらう」という謙虚でかつ大らかな発想の行政が増えることで、「スモールコンセッション」が注目ワードになっていくか?を引き続き楽しみにしたいと思います。


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