第8回製本教室「ブックリメイク」2020.01.26_レポート[前半]
BREWBOOKS(brewbooks.net)さんでのイベント、第8回製本教室「ブックリメイク」2020.01.26に参加した。
※今回はレポートが長いので、前半と後半に分けて投稿します。
今回のイベントも初参加。
BREWBOOKSさんに伺うたびに、サンプルとして展示されているリメイク済みの本を見て格好いいなと思っていた。
何よりも、自分のオリジナルの本、この世でたったひとつの装丁ができる点に強く惹かれた。
先生はSS-BOOKBINDINGさん(@pop_zine)。
今回だけではなく、様々な場所で製本教室をされている方。
TwitterやInstagramにこれまでの教室の様子や作品が掲載されているので是非ご覧ください!
ちなみに私が今回選んだ本は、『仮面の告白』三島由紀夫(新潮文庫)
言わずと知れた三島の初の書き下ろし作品。深い内容はまたどこかの機会で。
装丁はこんな感じ。これがビフォー。事前に自宅で撮影。
この本がどんな変貌を遂げるのか!
さて、会場はもちろんBREWBOOKSさんの2階。今回は先生と私、Kさんの計3名の少数精鋭。先生が今回使用できる用紙の束を机に広げながら始まる。
新年1回目の製本教室ということで、新年の抱負などの何気ない雑談からスタート。
先生も気さくな方で肩肘張らず、私は真昼間からビールをいただきつつで、リラックスした雰囲気で作業開始。先生が愛する原民喜のお話はとても興味深かった。『夏の花・心願の国』の解説を書いているのが大江健三郎だったり、自死したのは吉祥寺-西荻窪間だったりと自分の背景に近い事柄を感じた。
また、この教室では、伝統的な製本の方法に囚われることなく、もっと自由な発想で楽しむことをモットーとしている。「本も自由に!!」というテーマのもと、伸び伸びと取り組むことができる。本“も”という言葉に先生のこだわりを感じ、深く感じ入った。
そんなお話を聞きつつ、今回の流れへ。
今回の過程は大きく分けて下記の6通り。
<1>表紙、見返しの用紙選定
<2>見返し作成
<3>花布(はなぎれ)、しおりの選定
<4>花布(はなぎれ)、しおりを本文へ接着
<5>表紙作成
<6>表紙と本文を接着
大まかに分けるとこの通り。
本のパーツを細かく作成していき、最後に全てを接着し本にするというイメージ。
1.表紙、見返しの用紙選定
早速ここが一番の迷いどころ。だけど楽しい工程。
先生が持ってきてくださった紙の中から、イメージに近い用紙を選ぶ。
もちろん使用したい用紙がある方は持参もOK。※使用できるかどうかは先生へお問い合わせください。
私が選んだ『仮面の告白』は三島自身と思われる「私」の性的嗜好の苦悩を精緻な文体で描いた作品。少年が悩み、葛藤し、渦巻いた自我に振り回される苦しさを表現したいと思ったので、欲望や葛藤が渦巻いている様を象徴的に表している用紙を選定した。
一方、Kさんは表紙にはご自身で持参した用紙を選定。この日のためにイメージに合う用紙をネットで調達したとのこと。事前準備からバッチリだ。
見返しとは、表紙と本文の間の用紙である。市販されている本の見返しは、本のはじめと終わりで同じ用紙を使用していることが大半だ。
しかし、自分で作成するときには、本の始まりと終わりで変えることもできる。物語が進むにつれて変わるイメージを用紙で表現するのか、本全体をイメージし統一した用紙にするのか。
何を選ぶも、その人が言葉にできればいいんです、と先生が仰っていたのが印象的だった。
私も当初頭の中に思い描いていたイメージと、用紙を前にしたときでは全く異なるイメージが出来上がっても、用紙から想起されるイメージもまたこの本の一部なのだろうな、と思った瞬間だった。奥が深い。
2.見返し作成
続いて見返しの作成。
ざっくりと文庫本の大きさよりも二回りほど大きいサイズで切る。
後ほど、本文の大きさに裁断するので大きくて構わない。
薄い用紙は、同じ用紙を貼り付けて補強したり、裏側に別の用紙を貼って補強する(裏打ち)。
ここで、用意した文庫本の表紙を破り、表紙の部分と本文の部分を完全に分離する。
表紙の作品名、著者名は後ほど切り抜いて表紙や背表紙に貼り付けることもあるので、雑に破らないよう慎重に。
表紙を破るなんて初めての行為。恐る恐る分離させる。
こんな体験ができるのも製本教室ならではのことでとても新鮮だ。
※慎重に破いて分離させた本文と表紙。
表紙を分離させた本文に見返しを慎重に貼り付ける。
筆や竹ひごを駆使して慎重にじっくりと行うことがコツ。のりは塗るのではなく置くように乗せるのが良いと、随所でアドバイスをもらいながら進めてゆく。
3.花布(はなぎれ)、しおりの選定
花布(はなぎれ)も色がたくさん。それぞれ思い思いに選定。
ちなみに花布(はなぎれ)とはこの部分。背表紙の天地(上下)に見える布のこと。
※本文用紙の背の付け根に見える縞々の布のこと。
実は大事なパーツ。本を棚から抜くとき、真っ先に指をかけるのはこの部分。背表紙の天地(上下)両方に貼り付けてあり、今は「天」の方に指をかけて棚から引き抜くことがほとんどだが、昔は「地」の花布に指をかけて引き抜くこともあったとか。
こんな製本の裏話が聞けるのも、この教室の面白いところ。
製本しながら、製本の歴史や豆知識が学べる。
しおりは別名スピンとも呼ばれる。
なんと、文庫だと新潮文庫のみ!だから新潮文庫の天はアンカットなのだ。
という豆知識まで。
さらにしおりは1本でも2本でも可能とのこと。
自分は2本にしてみた。これも意図を持ってのこと。この真意は是非後半で。
※色とりどりのしおり。
4.花布(はなぎれ)、しおりを本文へ接着
先ほど選んだ花布としおりを本文へ接着する。
文庫本の表紙の用紙を剥がした状態にする。この状態にしてみるだけでも、本がどのように“本”となっているかを知ることができる。
花布としおりを接着する前に、寒冷紗(かんれいしゃ)と言われる布を、背を包むように接着していく。
寒冷紗(かんれいしゃ)とは、麻を網目上に荒く編み込んだ布。製本だけではなく、農作物の日除けやチーズを作るときに使われるようだ。(後日調べました)この布を背に貼り、しおりを接着し、花布を背の天地に貼り付ける。
徐々に本にしたときの出来栄えに関わる装丁の意味合いも強くなってきたので、より集中して慎重に作業。
気づけばほとんど写真を撮ることもないくらい集中していた…。
ということで、前半はここまで。
次はいよいよ表紙の作成。最初に選んだ用紙をどのように使うのか、イメージの膨らませどころ。
後半の投稿をお楽しみに!
(後半へ続く)
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