【詩】灯台
灯台のあかりは
何かを照らそうとしているわけではない
暗い海の上に光が向けられていても
船を照らし出すことはない
ひと晩中ともしているのは
わたしはここにいるという訴えだ
その光っているひとみは
しかし
応えを見られない
気づいているよと
誰かが応えていても
それを知ることはない
それでも
灯台はひと晩中
あかりをともし続けている
わたしはここにいる、と
夜明けの陽が届き
ぬくもりを感じたとき
ようやく安心して眼を閉じる
たしかにわたしはここにいる、と
(『詩人会議』2022.5月号)
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