【エッセイ】菅原克己を読む①
ここにいくつかの
……詩の組の若い友だちに
菅原克己
ここにいくつかの
小さい音がありましたら
祝福してください。
あの笛吹きのあとを
こんなにぞろぞろついて行っては、
どうせ川か海にはまって溺れるのが
関の山ですが、
それでも、
自分の音にびっくりして
立ちどまる者がおりましたら
指を鳴らしてください。
世間ではかいのないことを
けんめいにやっているそのことだけで
口笛を吹いてください。
菅原克己は新日本文学会が開いていた文学学校で詩の組の講師をしていた。そこに集まる若者たちとの生き生きとした交流は、いくつかのエッセイでも魅力的に描かれている。おそらくそんな若者たちに向けて書かれた詩なのだろう。
高みにいる人によって示される笛の音に、無自覚についていくことは時に危うい。大切なことは「自分の音」に気づくこと。他人の吹き鳴らす大きな笛の音に惑わされず、自分のたてる小さな音に気づき、自分の意思で立ち止まること。
菅原は若者たちに、大きな流れの中であえて自覚的でいることの大切さを訴えている。理論を超えて、その思いの感じられる素晴らしい詩だと思う。
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