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スタンコ(stanco)は、オタンコナスじゃないとわかった話
ciao! sono ya. piacere!
私は、22年前、4歳と1歳半の息子を連れて、イタリアで1週間程ホームステイしたことがある。今日はその時の話をしようと思う。
25年ほど前、ヒッポファミリークラブに入って、様々なメンバーがロシアやメキシコやフランスなど色々な国にホームステイに出かけた話を、たくさん聞く機会があった。
自分もどこかにホームステイに行ってみたいと思い、次男が2歳になる前なら安く行けるので、どうせなら遠い所に行こうと、食べ物も美味しそうなイタリアに決めた。
イタリアに行くと決めてから、ヒッポのイタリア語ストーリーテープばかりを聞き続けた。しばらく同じものばかり聞いていると、もう聞きたくないと思うほど、聞くことが嫌になってしまった。かけ流していても全然耳に入ってこない。苦しくなって、イタリア語以外に変えたりした。それでも小さな子ども2人を自分1人で連れて行く責任感もあり、何か覚えなきゃというプレッシャーでいっぱいで、やっぱりイタリア語聞かなきゃ!となる。
その頃は、マテリアルもカセットテープだったし、ストーリーの種類も少なかった。50分くらいの1つのストーリーをグルグル延々とかけ続けるか、カセットテープを出し入れして、他のものに変えるかだった。
一つのストーリーで、場面ごとに言語が変わる画期的なエディションテープもあって、それは大好きだったが、生憎、英・西・韓・独・仏・中・日の7カ国語で、イタリア語は入ってなかった。
今なら、iPhoneに全ての音源を入れて、シャッフルでも聞けるし、気になった部分をサッと選んで聞くこともできる。
それに今は、一緒にホームステイ交流に出かける仲間や、その周りの応援隊の人もみんなでグループLINE通話して、みんなで音源を聞いて、聞こえた音をシェアしたり、話したりもできる。
昔は、一緒に行く人の名前と住所が事前に分かるぐらいで、全国から成田に集まって出発する当日初めて会って話すメンバーがたくさんいた。
1人で一生懸命イタリア語を聞けば聞くほど、イタリア語が逃げて行ってしまう気がして、出発する時になっても、イタリア語が分かるとは到底思えなかった。挨拶と本当に簡単な自己紹介がやっと言えるかどうか?って感じだった。
息子達は飛行機の中では遊び続け、乗り継ぎのタイミングで寝てしまったりして、一緒に行ったメンバーには、荷物を持ってもらったり、息子を持ってもらったり、大変お世話になった。
1歳半の次男は、いきなり飛行機に長時間乗せられ、知らない所へ連れてこられて、とても機嫌が悪かった。時差ボケもあったと思う。初日はみんなでホテルに泊まって、翌日ホスト家族と対面の予定だった。そのホテルの部屋でも、ドアを指差して泣き続けた。帰りたいと訴えているのだ。でも、今更どうすることもできない。
その日はなんとか寝かしつけた。翌日ホストが迎えに来てくれて、ホストの家に向かった。ホストは20歳過ぎの可愛い女性で、英語も話せたので、英語で必要な事は伝えることができた。
次男の機嫌は悪いままで、家に着いて迎えてくれたマンマの前でも大泣きして、全然泣き止まなかった。
ノン ピアンジェレ( non piangere)
マンマが言ったことばは、イタリア語のストーリーテープの中にある音と一緒で、「泣かないで」って言ってるのが分かった!着いた途端大泣きして全然泣き止まない息子を申し訳なく思いながらも、マンマのことばが分かったのはとっても嬉しかった。
でも、その次に言われたことばは、分からなかった。
スタンコ!(stanco)
なんだか響きがオタンコナスみたいで、何を言っても何をやっても泣き止まない息子を、強情な子だなって思われている気がしてしまって、申し訳なくなった。結局、私達の寝室に案内してもらい、落ち着くまで家族3人でいるしかなかった。
ホストは、おもちゃを持ってきてくれたりして、色々気遣ってくれた。ありがたかった。
その夜の事だった。急にヒッポのストーリーテープの一部が頭に浮かんだ。空港でホスト家族に出会った主人公の女の子が、ホストママから声をかけられるシーンだった。
セイ スタンカ? (Sei stanca?) つかれてるんじゃないの?
そうだ!主人公は女の子だから、スタンカだけど、息子は男の子だから、スタンコなんだ〜!わあぁぁぁぁぁ!夜中だけど大声出しそうになったよ。わかっちゃった!!!!!
マンマは、疲れてるのね、こんな小さいのに長旅で、かわいそうにという思いで言ってくれたことばだったんだ。初対面で、音の響きで想像するしかなかった私だったが、強情な子だと思っていたのは私だけで、マンマは、とても息子のことを思いやってくれていたんだ。マンマの事を勝手に誤解して申し訳ない思いと、スタンコが分かって嬉しい気持ちとごちゃ混ぜになって、ただただ興奮し、翌朝、ホストにその気持ちをなんとか英語で説明しようとしたけど、上手くいかなかった。
今、これを読んでくださっている人にも、上手く伝えられる自信は無い。
自分の中にある音と、聞いた音と情景が重なって、意味が分かる。たぶん赤ちゃんが日々やっている事。それが、大人の私にも起こること。ちょっと時間差はあったけどね。
単語の意味や文法を一生懸命覚えて理解するのとは、少し違う道筋で、相手のことばを理解すること。
多言語の自然習得にチャレンジしている自分が、経験してみたかった事だった。
たぶんこの25年で、一番育ったのは、人の話を聞いて理解するために、相手の気持ちや言いたいことを想像する力かな。今なら、マンマの言いたいことをちゃんと想像できる気がしている。
余談ですが、上の写真は、ホストに教えてもらったレシピで、アレンジしながらも作り続けているシンプルなトマト味のパスタです。かなり長い間、マリアのスパゲティと呼んでいた、次男の一番の大好物です。