Day1-判明と交渉
窓口の担当者が現れ、救急外来の奥の部屋に通されたのだと思う。看護師が救急担当医師か、身振りで「車椅子に乗れ」と言う。
日本で見る車椅子とは全然違う形だ。背の高い背もたれが付き、ちょっとした玉座に座る感覚である。映画"ハンニバル"で、レクター博士が刑事を座らせた車椅子を押すシーンがあるが、その時に登場した形と似ている。
車椅子に座った私は、これでやっと診察してくれる安堵感に包まれた。採血され、救急外来の医者と思しき若い女性から診察を受ける。
これは重度の疲労か、食あたりか。はたまた伝染病か。不安は過るが、医者は私の状況を見て何か分かった様子だ。待合室で待つわけではなく、車椅子のまま連行され、知らない建物に入る。
どこへ行くのだろうか…。着いた先は、大部屋の男性病棟だった。疲労にしては大袈裟である。とにかく、ベッドで寝られるのは嬉しい。今なお続く高熱と痛みは辛いが、とりあえず病室は安心だ。ほどなくして診断が出た。そして、通訳Aさんから伝えられた言葉に耳を疑った。
急性盲腸炎
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