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【私のこだわり旅】知らないまちの灯りに誰かの生活を感じる
旅先で、まちの灯りを眺めるのが好きだ。灯りを見ながら、その土地に住む人たちの生活に想像を膨らませる。
商いをしている人、食事の支度をしている人、もしかしたら今からまちへ繰り出す人もいるかもしれない。
自分にとっては旅先の観光地でも、誰かにとっては住み慣れた場所でのいつもの一場面。小さな灯りの集合から、日常と非日常が交差する瞬間を感じると、不思議と「来てよかったな」と思う。
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尾道水道は、広島県尾道市にある瀬戸内海の水道。
定番の観光スポットである千光寺の展望台から、尾道水道が一望できる。昼に見ても綺麗だが、日が暮れてオレンジ色が混ざった景色には、どこか懐かしさや安心感のようなものを感じる。
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他県から移住して店を開いている人や、新しくできたモダンな施設も増えている尾道。情緒あるトーンの中にも、人間味が感じられる尾道らしい夜景だ。
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タイの首都バンコクといえば、ナイトマーケット。
食事やショッピングをしながら、異国ならではの夜の空気を楽しむことができて、人気の観光地でもある。
「ラチャダー鉄道市場」に訪れた際に、カラフルなテントで埋め尽くされた景色に圧倒された。
商売をし、飲み食いをし、語らう。そこで生活する人たちの力強さをそのまま絵に描いたような鮮やかさだった。
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残念ながらすでに閉鎖されてしまったが、「ザ・ワン・ラチャダー」という新たなナイトマーケットとして生まれ変わっているようだ。
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韓国の代表的な観光スポットであるNソウルタワー。
Nソウルタワーがある南山は、夜でも活気あふれる明洞や梨泰院に隣接しており、賑やかなまちの様子を片目にケーブルカー乗り場へ歩く。
展望台に着くと、そこからは「眠らないまち」のきらめきを、遥か遠くまで一望することができる。
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日本でも同じような市街地の夜景を見ることがある。
しかし、ソウルタワーから眺める灯りには、普段は味わうことのない、どこか高揚した気分にさせられるのはなぜだろうか。
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非日常の先にも生活は続く。旅先で光る灯りに、知らないまちの誰かの生活を垣間見て、また明日からの日常を丁寧に編んでいくのである。