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「育てる」革リュックを買ったハナシ

 買って良かったもの。それはカワノバッグ製の革リュックだ。

 転職して営業職になってから、ノートパソコンを持ち歩くことが増えた。
 近年のものがいくら軽量化されているといっても、持ってみるとズシリと来る。それまでビジネストートを使っていたが、肩紐とコートが擦れすぎて、ついにコートが破れてしまった。

 これをきっかけにして、思い切って仕事カバンをリュックにした。
 この革リュックはそれから程なくして買ったものだ。

 転職先の同僚たちもノートパソコンを持ち歩くので、リュック派が圧倒的。リュックにしても職場でアレコレ言われることもないだろう、と感じたのもリュックに宗旨変えした理由の一つだ。

「買うからには、出来る限り、愛着を持って使いたい」

 そう思って、仕事場や営業先に持っていっても違和感のないものを探すことにした。ただ、なかなか使いたいようなカバンは見つからなかった。
 あるビジネスセミナーの講師の方が、革のリュックを愛用していると聴いたことを思い出す。
 セミナーの休憩時間に見せて頂いたが、見るからに堅牢な作りで、長年使えそう。当時、なかなか革のリュックが珍しかったので、鈍く光る革リュックは、訪問先と話題作りにもなるとのことだった。
 しかし、その時は講師と同じモデルを買うにはとても出せる金額ではなかったし、仕事柄、ビジネストートで十分と思っていたので、憧れはあったけど、憧れのままだった。

「あの会社さんなら、あるかなぁ」

 前職で松戸のお客さんに訪問するある日、カワノバッグさんの前を車で通ったことを思い出したのだった。
 革製品を専門にしている会社さんが、通り沿いにドンと社屋を構えているのが珍しいと思って、記憶に残っていた。その時、タイミングよく信号待ちしていたので、チラ見すると、1階フロアが直販コーナーとなっていた。直販出来るようなら、実物を手に取って見ることも出来そうだ。後で調べてみると、直販だけでなくネット販売もしているという。でも、一度はどんなものが売られているか、見てみたいなと思って、そのままにしていたのだった。

 ある日曜日、用事を済ませた帰り道、思い切って立ち寄ってみた。
 革のリュックが欲しい、というだけで、デザインにこだわりはない。ただ、オシャレな作りよりも、ちゃんと仕事で長く使えるものが欲しかった。
 応対して頂いたのは、いかにも接客販売のベテランといった雰囲気の方で、こちらを初めて訪ねたこと、仕事で使えるリュックを探していること、出来れば長く使いたいこと、ノートパソコンを持ち歩いたりするので、疲れにくいものが欲しいこと、というこちらの勝手な要望を丁寧に聴いていただき、並んでいた商品をこれまた丁寧に説明して頂いた(お店にいた他の人に聴いてみたら、実はとてもエライ人であった……)。予算オーバーしていたものの、満足して長く使えば、適当に選んだものよりもきっとコスパは良いだろう、そう思って購入したのだった。

 タンニンなめしなどの革細工は経年(エイジング)で色が変わり、独特の雰囲気を醸し出すので、使う人によって「一点物」に「育てる」楽しみがあり、これは革製品の醍醐味だと思う。
 今まで持っていた本格的な革製品は、財布やパスケースといった小物だけだったけど、今回購入したリュックで本格的に革製品を「育ててみたい」と考えて、レザーケア用品を買い込み、月一ペースで手入れしている。
 他の革製品サイトで経年したカバンや財布などをみて、自分のリュックはどんなふうになるのだろう、と手入れするたびに写真を取っているのだ。数年後、購入時と経年で色の変わったリュックを見比べて、良い「味」が出ているリュックになっていることを願っている。

 また、カワノカバンさんで購入して嬉しかったのは、メーカーならではのアレンジのきいた修理をやってくださることだ。
 実は私のリュックは修理してもらって、今は売られているものと違う部品がついている。通勤電車で何かに引っかかったのか、チェストストラップの部品が取れてしまい、なくしてしまったのだ。「チェストストラップ」という部品の名前もわからなかったので、リュックを持参して理由と希望を伝えると、購入時に応対して頂いたエライ人が「あー、二階に職人さんがいるので、やってもらいますわ」と材料費込み数千円で対応していただいた。
 待つこと小一時間。リュックの制作工程で出たであろう、同じ革をあしらったチェストストラップを作って頂いた。より一点物感が出て、値段以上の満足感があった。

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 私個人としては、普段使いのものは長く使えるものを選ぶことが多くなってきた。コスパのこともあるけれど、やはり気に入って使いたいからだ。革製品は本人が飽きない限りは、手入れしながらずっと使い続けられるモノたちなので、犬のいたずらや、ダメージが出てしまう雨などに気をつけながら、持ち主も良いエイジングをしていきたいなぁ、と強く願っている。

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塚田裕介
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