相合い傘
パーマ屋に行った母を迎えに行くとき
父と折り畳み傘に入って駐車場まで行った
濡れないようにと肩を組まれた
寒かったし
雨だし
腰の痛みが少し楽になるからと抱き寄せる父の手は温かく
周囲の目をこっ恥ずかしく思いながらも
悪い気はしなかった
雨の夜はセンターラインが少し見づらいから
父の目となって飛び出す人間にも警戒する
その役割がある
免許をとっておけば父の代わりができただろう
さっき父が飲んだコーヒー牛乳の香りに似たものが鼻腔を擽る
少しだけ右を向いて歩調に留意する
右肩の父の手の大きさは
最近気づいた手のしぼみとはちがう
小さい頃の手だ
見上げて握っていた手だ
ゴツゴツで温かい手だ
慌てていて傘を忘れたおかげなんだろうな
車のドアを開けながら思った
乗り込む前に雨のほうをじっと見つめた
目を、こすりながら助手席に座った
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