【小説】2.湖の森の水姫と靑日凪
前話
僕が最初に月を観測したのは、六年間背負ってきたランドセルをそろそろ手放そうとしていた頃だった。従兄から譲ってもらったランドセルは、同級生が背負うピカピカのランドセルと比べるとくすんで見えたが、新品だと汚すまいと丁寧に扱いたくなって背負うことも憚られる気がするので、僕にはこれが丁度良かった。くすんでいることを笑う同級生もいなかったので、僕とランドセルは何事もなく卒業することが出来た。
月を観測したのは僕だけで、両親や晴臣だってそのことを知らない。未だに知らない彼ら