
【ゲーム感想】令和にプレイした『幻想水滸伝1』は、UI・ストーリー・仲間・バトルが問題だらけの凡作だった
【はじめに】
本稿は批判意見を多く含んでいるため、本作が好きな方は注意してください。
【プレイ時間】
およそ20時間程度。
【評価点】
●本拠地が発展していく様子は賑やかで楽しい
●ワールドマップが見やすい
・「水滸伝」を手に入れると、ワールドマップ上に各ロケーションが表示されるようになるため、移動しやすくて便利
●戦争パートが楽しい
・各コマンドに108星のキャラが対応しており、『軍記物』『108星』といった本作の特徴がうまく活かされている。
・ここだけなら簡易的なFEのようで楽しい。
●マップが分かりやすい
・宝箱のある行き止まりは短くなるように配置されているため、宝箱の取り逃しを嫌う『行き止まり症候群』の人に優しい
●武器をお金で強化するシステム
・仲間が多すぎる本作では、それぞれに武器を買って装備させると大量の武器種が存在することになるので、武器を持ち歩かなくていいこのシステムは嬉しい
●説明書ならぬ『解説書』がとても分厚く、読み応えがある
・赤月帝国の過去、紋章やアイテム、108星や敵キャラクター、モンスター等が、豊富なイラストと共に解説されていて、設定資料集として楽しめる
【賛否両論点】
●『108星』の設定がうまく活かされていない
・108人の仲間が登場するとはいっても、その殆どは物語に関わらず、ただ話しかけるだけで仲間になるようなモブばかり。
無理に水増ししてるだけで、一人一人のエピソードが薄く、個性に乏しく愛着も湧かない。
・ストーリーに関わるキャラも、自分の担当イベントが終わるとほとんど喋らなくなりモブと化す。
・仲間が多すぎて、主人公以外のキャラが頻繁に入れ替わるため、主人公以外はドーピングアイテムを使っても恩恵が薄く、育成を楽しむことができない。
・加入時期が限られたキャラも多い。
・普通「108人の仲間が登場する」と聞けば、「そんなにキャラを出してちゃんと活かせるの?」という懸念が最初に浮かぶはず。
そんな素人でもすぐに思いつくような問題点が残ったままなのは、プロとしてどうかと思う。
・仲間キャラの多さも、仲間キャラの魅力も、仲間キャラを集める楽しみも、本作の三ヶ月後に発売した「ポケットモンスター赤・緑」の方がずっと優れている。
●108星を集めなければバッドエンディングになる
・そのため、108星を集めることが、やり込み要素ではなく半ば強制のように感じて、仲間集めを素直に楽しむことができない
●ボリュームはあっさり控えめ
・普通にクリアするだけなら10~15時間程度。全ての仲間を揃えても、よほど迷わなければ20時間ほどでクリアできてしまう。
・当時のRPGは通常クリアだけで15~20時間、やり込みで20~30時間が当たり前だったため、当時としてはややボリュームが薄い。特に、108人という膨大なキャラを活躍させるにはあまりにも短すぎる。
・この短さでは108星を活かしきれず、モブばかりのイメージになるのも当然だろう。
●ストーリーがやや大味で、掘り下げが薄い
・「立場による親子の対立」「育ての親との死別」などの魅力的な要素があるにも関わらず、そこに至るまでの描写の掘り下げが薄くてあまり活かされていないため、感情移入できない。
●ギャンブルがヌルゲーで、金が貯まりやすい
・本拠地にいるガスパーに話しかけると、チンチロリンのギャンブルで遊べる。
・ところがこのガスパーは、なかなかの高確率でションベンや一二三を出して勝手に自滅してくれるため、あっという間に金がカンストする。
・お手軽に稼げるのは嬉しいが、ややバランスブレイカーになっている
●BGMが地味
・印象に残る曲がほぼ無い
【問題点】
●UIが悪い
・アイテムがパーティメンバー毎に紐付けられており、さらに消費アイテムと装備アイテムが同じアイテム枠で管理されている。
普通にプレイしていれば、1人10枠のアイテム枠のうち4,5枠が装備で埋まる。
FC時代のドラクエかよ!?
・『ここで装備していくかい?』が無く、アイテムを購入したら自分で装備する必要がある。
そのため装備を変更するためには、まず装備したいキャラのアイテム枠に空きを作り、そこに装備したいアイテムを入れてから装備メニューを開いて装備しなければならない。
・ドラクエ6以降ではお馴染みの「ふくろ」が無く、アイテム枠が狭いうえに受け渡しが面倒。倉庫が解放されるのもやや遅い。
・パーティメンバーを変更するために、本拠にいるマッシュにいちいち話しかける必要がある。
これだけならこの時代でもよくあるシステムだが、このパーティメンバー変更時には名前のみがリスト表示され、顔グラが表示されない。
108人まで増える本作のキャラを、顔グラ無しの名前のみで判別するのはきわめて困難であり不便。
・パーティ変更後に謎の暗転が発生する。
パーティ変更は頻繁に行うので少し気になる。
・本拠地レベルが上がる度に本拠地の内装か変わってしまい、その度にシステムで必要なキャラの配置が変わる。
特にパーティメンバーを変更するマッシュの位置が変わるのが面倒。
・本拠地に不必要な階段のマップがあり、移動のテンポを損ねている。
・スキルがないとダッシュできない。SFC初期かよ!?
●バトルのテンポが悪い
・PS1だというのに、6人バトルで、しかも「ガンガンいこうぜ」のようなAIが無い。
・そのため6人分の行動をいちいち決める必要があり、とても面倒でテンポが悪い。
・唯一「総攻撃」だけは使えるので、テンポと手軽さを考えるとこれ一択になるが、そうなると戦略性が消える。
●バトルが単調
・一部のボスで回復が必要になるくらいで、大抵はとりあえず総攻撃しておけばどうにかなる。
・前述の通り、いちいち6人分のコマンドを選んでいると、時間がかりすぎてテンポが悪い。このことも、「とりあえず総攻撃」というプレイスタイルを助長している。
●育成要素に乏しい
・108人もの仲間がいるが、レベルと装備(魔法も装備扱い)以外に仲間を強化する方法が有限のドーピングくらいしか無く、育成要素に乏しい
・ただでさえシナリオにおいてキャラ一人一人の個性が乏しく影が薄いのに、システム面でも一人一人の個性が乏しく影が薄い
▶ FEの「クラスチェンジ」やポケモンの「進化」に当たるような成長要素は欲しかったところ
●取り返しのつかない要素が多い
・108星を全て揃えなければベストエンディングが見られないのに、仲間にできる期間が短いキャラがいて非常に困難
・中でも107人目に仲間にできる鍛冶屋は、他4人の鍛冶屋をパーティに入れた状態で話しかける必要があるのだが、ストーリーに沿って普通にプレイしていると、初めて会った時には固定メンバーが3人以上いるので仲間に出来ない。
・固定メンバーが2人以下(=自由枠が4人以上)で鍛冶屋のところに行けるタイミングはかなり限られる。
・そして108人目の加入条件は「ストーリーの特定のイベントまでに他107人を揃えること」である。
108人目の加入イベントの前に、107人目の鍛冶屋を仲間に出来るタイミングは、ごく僅かしか無い。
・しかも次回作の『2』には、「『1』でベストエンディングを迎えたデータが無いと十分に楽しめない」という呪いのような引き継ぎシステムまで付いているので、「今回は揃わなかったけどまぁいいか」では済まない
【総評】
軍記物のRPGという個性は面白いが、ストーリーの掘り下げが薄く大味だったり、目玉の108星が活かしきれていなかったり、UIが悪すぎたりと、PS1初期のRPGとしてはやや残念な出来。
総合的にはせいぜい中の上くらいで、軍記物が好きな人以外にはあまりオススメできない。
PS1初期のRPGとしては「ワイルドアームズ」をやった方がいいと思うし、軍記物が好きならFEをやった方がいいと思う。
リマスター版の発売日が決定したが、当時の思い出がある人ならともかく、今から初見で遊ぶのはオススメしない。