海のはじまり 第12話(最終回)感想
ド直球だった。
予告のシーンは開始10分くらいでだいたい出尽くした。前回のボロボロの状態から夏が選んだのは、海と対話することだった。とにかく真っすぐに、誠実に海と話すこと。その中で最初から海と一緒にいられなかったことを謝り、海の気持ちを理解しきれなかったことを謝り、実は自分も水季いなくなってさびしいよ、と打ち明けた。第8話で実の父親には「言えない」と言っていたのに。そうして海と2人の生活をもう一度はじめることになる。
最終回を見始めるまで少々気が重かった。少なくても楽しみには待てなかった。深く傷ついた主人公を見せられ、多分悪い終わり方ではないと分かってはいるものの、何か奇跡的なことが起きない限り気分よく見終わることはないような気がしていた。そのようなカタルシスをもたらす展開を期待しているような、いないような・・・。ところが奇跡的なことは起こらなかった。「いや、甘えよう。うん。」の夏の言葉の後、一番最初に現れたのが津野だったのは正直やられた、と思ったけれど、津野は夏のことを決して悪く思っているわけではないと、私は思っていたので、あり得ないこと(奇跡)だとは思わなかった。
生方さんの脚本はド直球だったのだ。起こり得ることしか起こらないようなストーリーだった。最終回で涙はあまり出なかった。朱音が海と夏との対話がうまく進んだことを見届けた表情に涙が出たくらいだった。それでも、夏の最後のセリフ「いるよ」を聞いて、そこに「海のはじまり」とタイトルが入ってくるのを見て、見終わって安らかな気持ちでいる自分がいる。
テーマとしてよく目にした「人はいつどのように“父“になり、いつどのように”母”になるのか」に対しては、水季の手紙の「はじまりは曖昧で、おわりはきっとない」が答えになっている。いつどのように、というのは曖昧で気がついたら親になっていた、というのが、確かにある意味真実であろうし、一度親になったならば、たとえそれが血がつながらない親子だとしても、親子でなくなることはない。たとえ亡くなったとしても。そして、「選べなかった“つながり”は、まだ途切れていない」というキャッチコピーに対しても、夏と海のつながりだけではなく、夏と実の父基春とのつながり、夏と弥生のつながり、弥生と海のつながり、津野と海のつながりなど、様々なつながりが、途切れていないことが最終話で示された。どの答えも当たり前と言えば当たり前のこと。でも、ハッピーエンドだったのだ。最終回がまさにはじまり。ラストの夏と海のシーンがきれいに第1話冒頭の水季と海のシーンにつながり、深い余韻を残した。目黒蓮の海を見守る表情には本当にあたたかい気持ちになった。今後続いていくであろう登場人物たちの日常が、幸多いものでありますように、と心から願わずにはいられない、そんなハッピーエンドであった。
心穏やかに見終えることができ、ほっとしているとともに、やはり語りたくドラマだと強く思う。『いちばんすきな花』もそうだった。かろうじて我慢したが、今回はついに自分の思いをつたない文章にしてでも、多くの人と共有してみたいという思いが抑えきれなかった。そのような地上波のドラマ、そして脚本はなかなか現在はないと思う。そして出演者やスタッフすべての思いが結実してこのような素晴らしい作品となったのだと思う、一視聴者として感謝している。次回作も楽しみに待っていたい。
さて、この後は本筋の感想からずれてしまうので、追記として2点ばかり気づいたことを。話したくて仕方がなくなってしまったので(笑)
まずは、先週のお話。ズタボロになった夏を見てすっかり気が重くなってしまった翌日の、『西園寺さんは家事をしない』の最終回。ルカと楠見くんの「ママ好きじゃない?一緒にいないから好きじゃない?」「一緒にいられないのに(ママのこと好きなの)?」「いるよ!ママはパパの中にいるの。ずっと。一緒にいるっていうのはそういうことなんだ。」「ルカの中にもいる?」「うん。そうだよ。」というやりとりを見て、頼む楠見くん、夏に言ってやってくれ、教えてやってくれ、と心の中で叫んだのは私だけではないはずだ。(楠見くんも亡くした側の人間だったのだから、すっとそのような言葉が出てくるのは当たり前なのかもしれないが)そして、今度は『海のはじまりの』最終回。津野の次に弥生、さらには大和までが現れて海と一緒に過ごすことになったシーンを見て、「偽家族かよ!」とこれまた心の中で叫んだのも、私だけではないと思っている。夏ドラマはこの2つだけではなく、まだ最終回を視ていないが、『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』も、家族というテーマを扱っており、どれもよいドラマだと思うが、やはり、私は『海のはじまり』があったからこそ、いろいろと比べたり、家族について改めて考えたりすることができたと思っている。
次にback numberについて。back numberのことは、恥ずかしながら『海のはじまり』の主題歌で初めて知った。とてもよかったので他の曲も聴いてみた。最近の曲の方が気に入ったのだが、少し前の曲「世田谷ラブストーリー」を、かなり好きになった。『海のはじまり』第9話、夏と弥生の別れのシーンは、どことなく世田谷ラブストーリーを思い起こさせた。ネットの書き込みにあった「逆世田谷ラブストーリーじゃん」には、激しく同意した。そして最終回。弥生が初めて夏の部屋に泊まった時の流れは、絶対に「世田谷ラブストーリー」を意識していましたよね?私の気のせいではないですよね?たいしたことではないかもしれないが、どうしても言っておきたくなったので書き残しておく。ちなみに、私はまだしつこく、夏と弥生の復縁はワンチャンあると思っている。
追々記。あまり涙は出なかったと書いたが、セリフの確認のため見直したところ、最初から涙が出て、水季の手紙が読まれるあたりからは大泣きしてしまった。目黒蓮、よかった。有村架純、素敵だった。池松壮亮、海に会えた(もしかすると夏に頼られたことも?)うれしさを夏の前では隠すヒクヒク動く表情がすごかった。他のキャストも皆よかった。古川琴音も手紙の読みも含めてよかったが、大竹しのぶはやはりすごい役者であった。
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