布団のプルースト
†ジョゼフ・チャプスキ『収容所のプルースト』岩津航訳
大戦中ソ連の捕虜になったポーランド将校が収容所でおこなったプルーストについての講義。本もなくただ記憶のみに基づいて語られたその講義は、文学の読書が時間もメディアも超えてなお持続し、誰かと語ることが可能なのだということを示している。収容所でのアダプテーションは文学や読書の限界を示すのではなく、逆に人間の生を拡張する自由を明かしている。ポーランド人が収容所でフランス文学を記憶で語る。その書物の名声でなく、ただ様々な読書経路の可能性で語るこの例こそ、世界文学として論じるにふさわしいだろう。布団に転がって読んだが、こういう本がそうして読めることを喜びたいものだ。