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ジュゼッピ・ローガン・カルテット The Giuseppi Logan Quartet

Tracklists
A1 Tabla Suite 5:39   A2 Dance Of Satan 5:16   A3 Dialogue 7:15    
B1 Ta neous 11:47   B2 Bleecker Partita 15:24

Credit
Bass – Eddie Gomez
Composed By, Tenor Saxophone, Alto Saxophone, Oboe [Pakistani] – Giuseppi Logan
Drums – Milford Graves
Piano – Don Pullen
Engineer – Art Crist, Art Crist
Recorded at: Bell Sound Studios, New York.

ESPの作品で1008番のポール・ブレイの「バラージ」までが64年録音。オーネットのタウンホールは別にしてアルバート・アイラーやファラオ・サンダース、バイロン・アレン・トリオが、いわゆる「ジャズの10月革命」の前の録音で、「バラージ」、「ニューヨーク・アート・カルテット」とこの「ジュゼッピ・ローガン・カルテット」が直後の録音ということになる。この3枚はどれもミルフォード・グレイブス絡みで、且つこの作品はベースがエディ・ゴメスで「バラージ」と同じ。そのあたりを聴きどころにするのも有りとは思う。
本作と次作の"More"のB面は同じレコーディング・セッションから取られたもので、ウィキペディアにローガンの当時の状況を物語るエピソードが載っている。さらにESPのバーナード・ストールマンや関係ミュージシャンにインタビューした"Always in Trouble: An Oral History of ESP-Disk’,the Most Outrageous Record Label in America by Jason Weiss"があって、ここにはローガン(2008年シーンに戻って以降のインタビュー)とミルフォード・グレーブスへのインタビューも収録されている。当時の感じがわかるので興味のある方は是非。翻訳もあるようです。

ローガンはマルチ・リード奏者でかつ次作"More"で聴けるがピアノもたいしたもの。フルートも良い。今作では冒頭で Oboe [Pakistani]というチャルメラのような楽器を吹くがこれも現地のマスター・ミュージシャンのようである。楽器をすぐにものにしてしまえる人がいるが、彼もそんなミュージシャンだったのだろうと推察する。
A1はグレーブスのタブラがフィーチャーされ、ピアノは中を弾いたり叩いたり、ベースもラインを弾くではなく破擦音を中心に出す感じで、面白いベース・トラックになってる。聴いた感じは複雑性もありながら、何かドローン的な効果がある。その上にローガンのパキスタン・オーボエが乗る。A2はどこか中近東的なモードとホール・トーンが組み合わさった雰囲気のメロディーをローガンが奏で、それをエディー・ゴメスのベースが支えるのだが、グレーブスとドン・プーレンがそこにカウンター的にアプローチするあたりが面白い。A3もテーマ部分は同じ構造で、都度ブレークが入りそのコンビネーションというか対比で聴かせていく。B1は「セーの」でやった感じで、途中ゴメスとグレーブスの長めのデュオがあり、グレーブスのソロもあるなど各自の演奏を聴く楽しみがある。B2はピアノがわかりやすいバック・グラウンドを形成するため一番オーソドックスに聴こえる。Bleecker Partitaというタイトルで当時のヴィレッジ周辺の描写として企図されていると言われれば(誰も言っていないが)そう聴こえる。

このレコーディング・セッションが行われた時期はオーネットもセシルも録音の機会に恵まれておらず、コルトレーンもフリーとは言い難い時期で、この年末に「至上の愛」を録音する。アルバート・アイラーも7月にスピリチュアル・ユニティーの録音を行ったのだがリリースは翌年である。
であるからオーバー・グラウンド的にはイニシャルのいわゆる"New Thing"の勢いが一旦停滞していた時期となるが、ストリート・レヴェルでの実践は進んでおり、その動きがいわゆる「ジャズの10月革命」(小さなローカル・イヴェントであったと思うが)に結実したタイミングであったのだと思う。これが翌年の65年以降の流れを作ったわけで、ESPは65年5月にこのタイトルも含めレコーディングしていたタイトル10作品ほどを同時にリリースし、シーンの形成を印象付けることになる。日本でも植草甚一さんのおかげもあってか「ジャズの10月革命」は随分知られているし、ESPもファンの多いレーベルとなっている。特に最初の方のリリースに関しては、64年、65年というムーブメントの胎動期をキャプチャーしており、前述の"Always in Trouble"など資料も充実してきたこともあって、関係者が亡くなっていく中、背景を想像しながら聴き直してみるのも楽しいと思う。

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