DIC川村記念美術館 続 ハゲタカの狙いは?
DIC川村記念美術館の行末に関して重大な発表があった。
以下は会社のリリース
https://pdf.irpocket.com/C4631/MjRP/fjrt/bQuk.pdf
加えて速報記事を掲載しておく。
これを受けて27日、他が上がる中、株価は4.6%下がる。配当落の影響があるにしてもそれ以上である。
今年の8月に以下の投稿をした。会社側はこの時点で12月に方針発表をする旨アナウンスしている。
この記事以降「価値共創委員会」が何を話していたのかは表にでておらず、関連の動きでは10月21日付けで、オアシス・マネージメントが株式の保有を8.6%から11.58%に増やしたことが報告されている。
https://pdf.irpocket.com/C4631/n85z/Kzt8/ACm8.pdf
これによってオアシスは(株)昌栄に迫る株主となったわけだが、本年の8月5日の暴落を機に、かなり安価で買い増したのではと推察され、美術館にしか興味のなかった彼らであるから、方針を発表させ、何らかのディールを確約した上で、一部利確したことも考えられる、が、これは推測の域を出ない。
今回の発表の骨子は
1) ダウンサイズして東京に移転
2) 美術品の3/4を売却
であるわけだが、どちらも違和感のある事項が付言されている。
1)に関しては「移転に係る費用については、必要最小限な数億円規模に抑える」とされていて、そのような少額で何ができるのか?というのがまずはの疑問だが、「公益性が高い団体との連携」「定義に該当する特定の団体の施設を移転候補先として交渉を進め、2025 年3月末までの最終合意と正式発表を目指す」としており、かなり具体的な話が進んでいる様子が窺い知れる。また「移転候補先は、検討した限りにおいては、上記団体のみとなります。上記団体との交渉が不成立となった場合は、美術館運営を中止のうえ、保有美術品の売却を検討しつつ..」と付言されているからこの付言が「必要最小限な数億円規模に抑える」ことと関連していることも伺えるし、「公益性が高い団体」と美術館の閉鎖を惜しむ日本の世論、美術関係者へのある種の脅しのようにもきこえる。書き振りからするとDICはかなりの無理を言っているのではないか?決裂した場合は「公益性が高い団体」のせいにして、それこそ大手を振って全部売却できるわけだ。ハゲタカの思うつぼである。
2)に関しては
「作品の一部については 2025 年中に速やかに売却に着手します。これにより、少なくとも 100 億円程度のキャッシュインを目指す方針ですが、売却状況によりその金額は変動する見込みです。更に残りの対象外となった作品を 2026 年以降に段階的に売却する方針です。」
としており、このしょぼいキャッシュイン目標に疑問符がつく。乱暴だが、そもそも簿価112億で3/4売却なら84億。16億しか利がない。前稿でも書いたが、DICは2013年にバーネット・ニューマンの「アンナの光」1点を売って103億の特別利益を計上している。
https://minkabu.jp/uploads/newsfeeds/pdf/204185/4cbf9ac61.pdf
普通に考えれば100億はどう考えても間違いじゃないか?という額で、発表自体の信憑性を疑われかねない、本当に価値を真剣に試算したのか?という疑問符がつく、いってみれば「ふざけた」数字だ。
また「 美術品の売却によるキャッシュインについては、株主還元、成長投資及び美術館の移転や運営に係る費用に充てる方針としますが、金額の規模並びに時期については、現時点では未定です。」としている。
移転費用は「数億円規模」と自ら述べ、また成長投資に関しても「大規模な戦略投資は一巡しており、当面は規模を抑えた投資を計画しています。」と述べているわけで、美術品からのキャッシュインはほぼ株主に還元すると言っているに等しい。であるから100億では株主が許さないだろう。もし真剣にこの金額を出しているのだとすると何か特定の大株主との裏取引を勘繰らざるおえない。そう考えると「2025 年中に速やかに売却に着手」というのも怪しい、このように一度に急いで大量に作品を売却することはマーケットを歪め結果安売りにつながることは素人でもわかる。売却にあたっての能書をもろもろ言っているが、言っているだけで、わざと拙速に売却することで、ハゲタカ関係者などインサイダーがごっそり安値で買い叩く、ということを予定した100億円ではないのか?
全体的に拙速に事が運んでいることが透けて見えるが、このことはこのニュースが表沙汰になった時からの一貫した印象で、かなりのプレッシャーが「先を急ぐ株主」からかかっている様子が窺い知れる。
次回の発表は25年の3月末で、移転先などの発表となるわけだが、DICの株主総会は例年3月末。株主総会を忌避し、全てが決定してしまうこの「価値共創委員会」スキーム。最後にこのハゲタカが何をするのか?注目である。またDICは美術雑誌にとどまらずマスメディアの大スポンサーの一つであることも付言しておく。今後メディアがどう対応するか?も要注目だ。
美術館は3月まで営業とのこと、寒い中だが、散逸する前に観ておくべき作品群と思う。先日行ってきたが、Tシャツが2.800円とお買い得価格で売られていた。