オールナイトニッポン55周年記念舞台「明るい夜に出かけて」を観劇して
先日、下北沢本多劇場で公演中の舞台「明るい夜に出かけて」を観劇した。
このnoteにはその感想や考えたことを、備忘録的に記しておこうと思う。
この舞台は、開局55周年を迎えたオールナイトニッポンがプロデュースしている。
主人公の富山は、「アルピーANN」のラジオ職人だったが、ある事件を機に心を閉ざしてしまい、大学を休学し1人遠くの街でコンビニで働きながら暮らしている。
人との関わりを最低限した暮らしで、コンビニバイトを始めたのは大好きなラジオ漬けにならないために自分に課した課題のようなものだった。
そのコンビニに、偶然アルピーANNの名ハガキ職人虹色ギャランドゥこと佐古田がやってくる。
この偶然が、富山の空白だった日々を変えていく物語だ。
語弊があるかもしれないが、この舞台を見終わった後に人生が変わるとか、考え方が変わるとか、そんなことはない。
しかし、観劇中に何故かホロリと涙が溢れてきて、観劇後には明日からも頑張って生きてみようと勇気をもらえる、不思議で温かい舞台だった。
主演は舞台初主演のジャニーズJr. 7 MEN 侍・今野大輝。
主人公富山の日々を変えた女の子佐古田役は、今作が舞台作品初出演の伊東蒼。
その周りをベテランの板橋駿谷や鈴木杏樹などが固める。
私がこの舞台に温かさを感じたのは、このキャストが大きな要因なのではないかと考えている。
メインキャストが若手俳優の2人。
特に、伊東さんは役柄と同じ現役高校生。
そんな2人を、周りのキャストが愛らしく見守る空気感や、2人の人生の節目となるであろうこの舞台を良いものにしようという熱意が、演技だけでなく、前座の板橋さんとアンガールズ山根さんの会話や、カーテンコールからも伝わった。
キャストがこの空気感なら、きっとこのカンパニー全体がこの空気感なんだろうなと感じられて、メインキャスト2人の初主演・初舞台作品がこれで本当に良かったなとなぜか親目線になってしまった。
内容に触れると、主人公富山は心を閉ざした大学生であり、過去の傷から大学を休学して1人家族の元を離れて暮らしている。
そんな富山にはどこか不安定さや今にでもふっと消えてしまいそうな儚さがある。
これは富山の周りの人間が富山を不自然なほど明るく見守っている描写が多いことによって引き立っていて、ストーリーが進んで富山の過去の傷が明らかになった時、富山の儚さも一因となって彼に感情移入してしまう。
この富山を演じるのが、まだ若手俳優の今野大輝であることがとても良かったと思う。
あの儚さは演技だけでは出すことができないし、彼の持つ独特な雰囲気や若さが富山をよりリアルな若者にしているのだなと感じた。
オールナイトニッポンのブースは、24時間365日いつでも明かりが付いていて、誰かが喋っている。
これは舞台の中で何度も伝えられたことだ。
周波数を合わせるだけで、いつでも誰かが寄り添ってくれる。
世界には自分しかいないのではないか、と寂しさに襲われる夜も、そんな自分を明るく迎えてくれる場所がある。
その事実があるだけで、日本のどこかに明るい夜を迎えている場所があるだけで、1人の夜も、眠れない夜も、明日が不安な夜も越えられる。
物語を通して伝えられたメッセージから、明日からの勇気をもらった舞台だった。
オールナイトニッポン開局55周年、おめでとうございます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?