
書評 脳の地図を書き換える 神経科学の冒険
『私たちを動かす装置はあらかじめすべてがプログラムされているのではなく、世界と相互作用することで自らを変える仕組みになっている。』(本文より抜粋)
あなたは人は変われると思いますか?それとも変われないと思いますか?
今回紹介する本を読むとそんな問いかけさえ意味がなくなります。
人は変われるんじゃない。人は周りの環境に合わせて変わるようにできている。
今回紹介するのは
【脳の地図を書き換える 神経科学の冒険
デイヴィッド イーグルマン (著), 梶山 あゆみ (翻訳)】
です。
この本では主にライブワイヤリングという概念について述べられています。
これは、周りの環境に適応するために自らを再構成し続ける性質のことです。
脳は可塑性という、周りの環境に合わせて変わり続けるという性質を持っています。その脳が持つ性質をライブワイヤリングという言葉を使って詳細に述べています。
このライブワイヤリングには7つの特徴があります。
世界を反映する 脳は自らを入力情報に適応させる
入力情報を受け入れる 流れ込んでくる情報を脳は何であれ活用する
どんな装置でも動かす たまたまどんなボディプランの内部にいようと、脳はその体を操る方法を学習する
大事なことを保持する 自分にとって何が大事かに基づいて能は資源を配分する
安定した情報を閉じ込める 脳領域間には柔軟性に差があり、それは入力情報の種類応じて決まる
競うか死ぬか 脳領域の生存闘争から可塑性が生まれる
情報を求める 脳は世界に関する内部モデルを構築し、予測が間違っていたらそのつどそれに合わせて自らを修正する
このライブワイヤリングという人の脳が持つ性質を示すために、著者は様々なエピソードを紹介しています。
例えば、脳が半分無い人のエピソードだったり、目が見えない人が視覚の代わりに聴覚などの他の感覚を発達させる。または全く新しい感覚器を付けることによりまったく新しい感覚が生まれ、それを使いこなせるようになるということ。
また、著者は神経科学者でありながら、そこで得た知見を実際の社会で生かすためにNeosensory(ネオセンソリー)という会社を立ち上げた起業家でもあります。
そこでは聴覚障碍者のための感覚代行システムを作っているのですが、そこで生まれたのが「ネソセンソリー・ベスト」という、世界の音を振動で感じるというアイテムです。
音を振動で感じるというのは変な感じですが、ライブワイヤリングという、入ってきた情報に合わせて脳の配線を変えるという仕組みがあるからこそこのようなことができるのです。
著者が提示する数々のストーリーを見れば、人の可能性について、自分の可能性についてワクワクが止められなくなることでしょう。
人は変われるんじゃない、変わるようにできている。
それも今まであなたが思っていたよりもはるかに大きく。
今この文を読んでいる正にこの瞬間にもあなたは変わり続けている。