ココトモクラブ取材記事 #1
台風一過の新宿歌舞伎町
2024年8月17日(土)、台風一過によって清々しいまでに広がる青空の下、東京都新宿・歌舞伎町界隈を訪れた。
全国的にも有名となった〝トー横〟から2ブロックほど曲がった路地裏。歩道と車道を隔てる白いガードパイプ、そこに軽く腰掛けている華奢な女性たち。服装や髪形はいかにも華々しいが、気のせいかどことなく悲壮感が漂う。
「みんな一心にスマホを眺めているでしょう。彼女らがみんな〝そう〟なんですよ。あそこに警察官もいますよね。自分から男性に声をかけるとすぐに摘発されるからだめなんです。ああやってスマホで時間をつぶしながら、声を掛けられるのをひたすら待っている」
案内してくれたのは、関東圏を中心に生きづらさを抱える人のために居場所提供事業を運営している、相楽暁さん(43)だ。
実際の〝トー横〟はいくつもの青い柵で封鎖されていた。その日はお祭りがあったようで、設置されたやぐらの上で数名が踊っている。さすがにその日はいなかったが、平日昼間は柵の前で寝ている方や車椅子の方もいるという。
「少し前までは、トー横は確かにホスト依存や風俗店に勤める女性のたまり場でした。ですがトー横がメディアに大々的に取り上げられて全国的にも有名になって、現在は必ずしもそうではないんです。会話が苦手であったり、相談機関にも自分から行くことができなかったり、〝生きづらさ〟を抱えているのに自分が何に悩んでいるのかはっきりと言語化できない、そういった方々が集うようになってきています。トー横という有名な場所に身を置くことによって、助けを求めている声なき声のように僕には見える」
スマホをいじる女性たちがたむろするすぐ傍のブロックには、無料の相談機関が居を構えている。彼女たちはなぜこういった機関を利用しないのだろうか。
「想像ですけど、『助けを求めても無駄』と思ってるんじゃないですかね。言語化の苦手さに加えて、多かれ少なかれこれまで傷ついてきた経験もあるでしょうから。僕も学生のころ虐待を受けたり学校でいじめを受けたりして、歌舞伎町近辺を放浪していたことがあるので……。僕が運営している居場所事業は、『苦しかった若者だったとき、気軽に行ける居場所が欲しかった』という思いが原点になっています」
多方面で仕事をする相楽さん
相楽さん自身は現在パラレルワーカーだ。
通信制サポート高校の職員として、子どもたちの学習、生活面のケア。生きづらさを抱える人のためのシェアハウス運営。シェアハウスでは利用者の生活保護申請のサポートも行うという。週1日のコンビニ勤務。
そしてもっとも注力しているという、NPO団体「ココトモクラブ」の運営だ。8月中旬から、バーを間借りすることにより新しく「新宿ココトモカフェ」をオープンした。
渋谷・葛飾・横浜・大宮等、複数の居場所が毎週継続して開催されており、ほとんどの居場所に相楽さん自身が運営として駆けつける。利用者からは毎回500~1000円程度の参加費を徴収し、会の運営費や自身の交通費に充当しているという。相楽さん自身もASD(自閉症スペクトラム)や吃音がある中、居場所づくりにかける情熱にはすさまじいものがある。
「ココトモクラブの特徴として、〝生きづらさ〟があるのであれば年齢や性別で利用者を区切ることはしていません。『暴言は禁止』などの最低限のルールは最初に説明しますが、守れるようであれば誰でも受け入れて
います」
「利用者にとっての選択肢を増やすことが重要だと思っていて、むしろ居場所ごとにコンセプトを変えているんです。発達障害がある人向け、毒親育ち向け、自習会を開くときもあります。選択肢を増やして、かつ継続して運営することによって、利用者が行きたいときにふらっと来れることが大事かなと」
もともとはオンラインからスタートし、今では多数の〝常連さん〟を抱えているというココトモクラブ。ソーシャルビジネスとしても興味深く、実態を詳しく聞くことにした。