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【創作】たけし先輩との100日間#16

#16日目「クリエイターたけし」
 王は白いひげを摘んで、悲しげに語り始めた。「我々、“クリエイターの世界”に生きる者は、創作物を生み出し続けていた。しかし、お前が“やつ”を持ち込んだことで、我々の世界は外部の“観測者”に観測されるようになってしまったのじゃ」
 王はゆっくりと周囲を見渡し、ため息をつく。
「その影響で、この世界は“観測者にとって理解しやすい物語の形”へと変化した。本来ならば、ワシは自分が“王”であることをわざわざ説明する必要はなかった。しかし、世界はこうして“王として語ること”を強いられている」
王は自嘲するように笑った。
「ワシの発言も、お前たちの行動も、“観測者”が理解しやすいように“整理された物語”になってしまったのじゃ。つまり、ワシは“この話の登場人物として”語ることを求められている」
「おいおい、全然わかんねえよ。観測者? クリエイター? どういうことだ?」
 たけし先輩が鼻をほじりながら聞き返す。
「たけし、その隣にいる者のことを書いていたのは、お前だろう?」
 王は不潔なものを見たかのような表情を浮かべる。たけし先輩は鼻をほじる手を一瞬止めた。
「お前は物語を作ることに没頭するあまり、その物語に飛び込み、そして戻ってきたのだ。それによりこの世界に改変が起きたのじゃ」
「………いやいや、さっぱりわからねえ」
 たけし先輩が“クリエイター”? ぼくがたけし先輩の物語の登場人物?
——なぜ王がその事情を知っているのか? ぼくは聞きたいことが山ほどあった。
 たけし先輩は巨大な成果物を、鼻から取り出して誇らしげだ。話を聞いてるのだか、きいてないのだか。

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